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第五十七話「女中長との契約」

「トリスが納得してくれる条件についてなんだけど――ん、あれ? ええっと……」

 全裸の少年が首の後ろに手を当て、はたと固まる。やがて後ろ頭を掻きはじめた。

「……よく考えたら、状況をもう一度整理しないことにはそれどころじゃないよね。まず、なにから話そうか」

 馬車の中で多少の話はしたものの屋敷への帰還を果たしたばかりで、大きな問題が山積みになっていることをいまさらながら思い出したのだ。
 豪壮な天蓋付きのベッドの向かいの足置きに座る女中長ハウスキーパーは、いまも勃起したままの少年の男性器に半目を落としながら、溜息をついた。

「……だから言葉など不粋と申し上げたかったのです。そうなると思っておりましたわ」

 ウィルとしても充血した生殖器を見せびらかしながら全裸で真面目な話を続けるのは大層居心地が悪い。
 服を脱ぐべきではなかったとも思ったが、この部屋を当面の屋敷の主人の居室と定めた以上、いまさら女中服に着替え直す気にもなれない。
「目の毒です」女中長は思わずといった感じでそうこぼしてから姿勢を正す。

「では、お話しされたとおり予言の神巫かんなぎマリエルの伝言を全面的にお信じになられるというのが、話の大前提であり基本線ということでよろしゅうございますね?」

 令息はこくりと頷いた。
 未来を見通していないとあのような刺繍を施した絨毯を寄越してくるなど不可能であろう。
 銀狼族の神巫を連れ去った商人がもし革命でも起こそうものなら、あるいは神巫自身が商人を使ってこの王国に復讐するならば、辺境領の貴族としては中央の騒乱に巻き込まれないように首を引っ込めているしかない。
 情けなかろうがなんだろうが、そうするしか選択肢がないのだ。
 あくまでウィルにとって大事なのは領地の屋敷カントリーハウスとそれを支える使用人たちである。
 ソフィアを保護していることが伯爵領の安全保障にも繋がってくるだろう。マリエルの伝言にわずかなりとも破綻がない限り、その指示に従っておくべきというのがこの主従の統一した見解であった。

「ルクロイの村の一件について、父さんには――伯爵にはどんな感じで伝わるかな」

 ウィルはそう懸念を述べる。
 レノスの街から王都まではうでと呼ばれる――折れ曲がる枝木のようなものがついた建物が一定の間隔で置かれており、それを望遠鏡で観測することで伝達していく信号線が敷かれており情報が早い。伯爵の耳に入るまでそう時間はかからないだろう。

「ご主人さまに身の危険があったと聞いて、まず心配なさるでしょう。ただ、こう申し上げるのも気が引けるのですが――それはあくまで伯爵家の後継ぎがいなくなり、でお家が断絶するかもしれないという実務上の懸念からでしょうが――」
「いいよ。そのあたりはいまさらだもの。政略結婚の駒もなくなるしね」

 ウィルはどこか割り切るようにふうっと溜息をついた。
 あの絨毯には『お父上が亡くなられとくがれた後に――』と記されていた。王都で政争を繰り広げている伯爵の死を前提にするのだから、ウィルの方も最初から親子の情などアテにしないと決めたのだ。

「さらに、ルクロイの村を占拠していた二十人もの賊を単身撃退したと耳にして、伯爵はさぞ驚愕されることでしょう。いつのまにそんなじょうに育ってしまったのかとお思いになられるはずです」
「ぼくが偉丈夫って……それに単身ではなく、ソフィアの活躍あってのことなんだけど……」
「単身です。女子供は物の数に含まれませんから。銀狼族だろうがなんだろうが少女の細腕が賊を腕力で圧倒したとだれが信じますか。ルクロイの村人の熱狂が世間にでんするのです」

 ぞぞっと令息の背筋が震える。
 ソフィアのことを説明して、王国に攻め滅ぼされた銀狼族の生き残りが関わっているなんて世間に知られようものなら藪蛇となるため、ウィルが背負うしかないのだ。
 高揚感どころか、自身の細い腕を見下ろして分不相応なこうみょうを成したことに不安しか感じられない。

「ぼくは小柄な方だから、偉丈夫どころか子供に含まれかねないんだけど……」
「ですから、屋敷の中にお隠れになり、ご主人さまの影を大きく見せることが肝要なのだと思いますわ」
「ああ、なるほど! ぼくが調子に乗って表に出ちゃうと非力な少年だってすぐにバレちゃうもんね」

 ウィルは、ベッドに後ろ手をつきながら感心したようにそう口にする。陰茎は反り返ったままだ。

「非力と仰いますが、ご主人さまがルクロイの村を解放したことは紛れもない事実ですわ」

 トリスはやや不満そうにそう言い添える。

「そりゃぼくも何人か撃ったけど偶然の産物というか……そういや、なんでこのタイミングで、レノスの街に新大陸からぼくのお嫁さん候補が来るかなあ……」

 これまでウィルの婚約者候補に名前が噂に上る令嬢は何人かいたが、伯爵が乗り気になったのは今回が初めてである。
 ウィルとしては、遠路わざわざ来た令嬢に対し気の毒には思うけれども逢いに行くことはできないし、屋敷に招くわけにもいかない。

「令嬢を放ったらかしにして行方をくらませていることについて王都まで釈明に来いって言われたらどうしよう。もしくはいい加減焦れた伯爵が十年ぶりにこの屋敷に戻ってくるとかさ」

 令息にとってはそれが一番困る。
 あまり露骨に伯爵の命に逆らうわけにもいかないし、伯爵が多くの男性使用人を引き連れて屋敷に戻って来たら、同じ屋根の下に隠れ住むことはさすがに現実的とは思えない。

「おそらく伯爵はそうはさらないでしょう」
「え? それはどうして?」
「これまでまったく目をかけてこなかった我が子が、賊を単身撃退する若獅子に成長したと聞いて、十年ぶりにお顔を合わせたいと思われると、ご主人さまは本気でお考えですか?」
「あ、あああ……」

 元乳母ナニーが言わんとすることを察し、ウィルの中にわずかに残っていた父親に褒めてもらいたいという幼年期の思慕が消え、父親を見殺しにする罪悪感のような感情が急速に冷えていくのを感じる。

「お父上にとって、ご主人さまとお顔を合わせるのは猛獣と同じ檻に入れられるような心持ちでしょう。直にお会いする代わりにこの屋敷には男性使用人が定期的に派遣され、ご主人さまがどういうおつもりなのか探りを入れてくるはずです」
「まるでソフィアになったみたいだね。だからぼくは女中の格好をして、女中のスカートの中に隠れないといけないわけなんだ……」

 令息は苦笑を浮かべつつ、マリエルの伝言がいかによくできているかを改めて実感することになった。

「いつまでも姿を現さないご主人さまに、おそらく伯爵は――反抗期に入り父親に逆らいはじめた――そのようにお感じになられることでしょう。ご主人さまが屋敷の女中たちにお手つきを繰り返していることも、いずれ伯爵のお耳に入るのではないかと」
「あわわわ。それって大丈夫なの!?」

 ウィルは悲鳴のようにそう問いかける。
 実のところ、大丈夫もなにもすでにマリエルの伝言を信じるしかない状況なわけであるが――

「わたしの個人的な見解としては、英雄色を好むというか、やんちゃなお年頃だとむしろ納得されるのではないでしょうか。屋敷のお手つき人数が増えていくことが、たまにご主人さまが屋敷にお戻りになっている――無事の知らせの代わりになろうかと思います」
「うわあ、それって最悪な後継ぎじゃないの……」
「いえ、伯爵にとって最悪などではございませんね。むしろ御しやすいとお感じになるはずです。女さえ与えておけばなんとかなると思っていただいた方がこちらとしてもなにかと都合がよろしいでしょう」

 それを聞いて令息は、一体どうしてこうなったのかと頭を抱える。さらにもう一つ頭痛の種になりそうなことを思い出した。

「そうだ。ギュンガスのことはどうしよう?」

 例の資産家の令嬢を放置してしまったレノスの街に、上流階級の令嬢好きの従者ヴァレットギュンガスが居合わせているのだ。

「どうもこうもございません。屋敷に戻って来られても始末に困りますから、適当に泳がしておくほかありません」
「よりによって面倒なタイミングで面倒な奴が面倒な場所にいるんだよな。余計なことはするなって指示したいところなんだけど……」
「極力お控えください。勘ぐられても面倒なだけですので」
「ギュンガスって『屋敷に連れ帰る使用人』に該当しないから、もしアイツが屋敷に戻って来たら、ぼく見つからないようにコソコソ隠れないといけないんだよね。アイツのこと奴隷市場で買ってやったのにぼくの方が逃げ隠れないといけないってのが納得いかないんだけど!?」
「致し方ありませんわ」

 主従そろって、ふうっと溜息をつく。それで屋敷の外側の件については一区切りがついた。

「これでようやくトリスの役得にも絡む話になるんだけど、そろそろぼくは、この屋敷を残すためにも自分の正式な奥さんを迎えないといけない。良いと思う?」

 令息はそう切り込んだ。

「……一介の女中であるわたしの身に余るご下問ですわ」
「新大陸の令嬢を勧めておいてよく言うよ、それに、ぼくに子作りの練習をするように促したのもきみじゃないか。まどろっこしいのは抜きにしよう」
「ふふ、分かりましたわ」
「さっきも言ったけど、ぼくは未来の奥さんと温かい家庭を築きながら、これまでどおり屋敷の女中を日替わりで抱き続けたいんだ。それは可能だと思う?」

 令息の股の肉の塔は燭台の火の光を浴び、テラテラと光っている。真正面に座る女はそれをたっぷりと凝視した上で口を開いた。

「ご主人さまの下半身に目をつぶってでも伯爵夫人になりたいご令嬢はたくさんいらっしゃるでしょうが、必要なのは目をつぶるのではなく、しっかり目を見開いた上でそれを受け入れられるご夫人です。結婚前に何ヶ月か屋敷でのは必須にございますね」
「可能は可能なんだ?」

 そう問いかけるとトリスは難しい表情をした。

「言葉を飾らず申し上げると実態は教育というより調教に近いです――それに奥方さまは屋敷の女中とはまるで立場が違いますので正直難しいところにございますね。未婚の淑女レディーが長期にわたって屋敷にとうりゅうしているのは明らかに不自然ですし、仮に無事に教育が完了できたとしても先方の実家を怒らせるリスクを考えるとそれを可能と表現してよいかどうか……」
「だから手近なところで手を打とうと思うんだ」

 令息の言葉に、トリスはギクリと肩を震わせる。

「手近なところ――まさか」
「安心して。ソフィアを妻に迎えるなんて言い出さないから」

 ましてトリスを妻に迎えると言い出すことはできない。そのあたりの現実の見えているところがこの令息のさかしいところであった。

「ほ、それは大変よろしうございましたわ」

 トリスがこの女にしては珍しく露骨に安堵の溜息をついているのは、令息が言い出したら聞かないと分かっているためであろう。

「ちなみに申し上げますと、当主が女中をめとると宣言したチルガハン侯爵家は上へ下へのお家騒動の真っ只中ですわ。当然、社交界には顔を出せませんし、侯爵家の傘下にあった貴族家からも婚姻を強行するのであれば離反すると表明されております」
「ギュンガスからちらっと聞いた覚えあるけど、アラベスカの嫁ぎ先ってそんなことになってるのか。そりゃ、そうなるよなあ……」

 もし、ウィルが伯爵家を継いだ後であっても、元奴隷であり異民族のソフィアを妻に迎えると宣言すれば同じくらいかそれ以上に周囲の反発を招きかねない。伯爵家であるにも関わらず近隣のより家格の低い貴族家からすら社交付き合いを断られる可能性がある。

「あのね、ぼくはもうちょっと現実的なんだ。ぼくが妻に迎えるには、貴族の血筋を引いているか、周囲を黙らせるだけの圧倒的な財力が必要だけど、ほら片方だけなら屋敷にもいるじゃない?」

 ウィルがそう伝えると、トリスは目を丸くする。

「あら、レベッカ――いえレベッカがいらっしゃいましたわね。ムーア子爵家が没落して、政略結婚のお相手としての価値が皆無になっていたのですっかり失念しておりましたわ」

 伯爵が存命のうちは決して取り得ない選択肢であった。
 ウィル個人としては、あの金髪の元女当主なら結婚相手として申し分ない。屋敷の中でも指折りに綺麗な女中であるし、なによりウィルに処女を捧げてくれた――王立学院の学友の上にのしかかるあの征服感にはたまらないものがあった。
 実務の面でも伯爵家の農地改革では随分と助けてくれたし――王立学院時代からウィルに負けてばかりで性格が少しひがみっぽくなっているものの――経営の分野ではウィルよりもずっと優秀であることは間違いない。

「こう申し上げてはなんですが――レベッカさまは小麦の空売りの件でご主人さまを罠に嵌めようとした前科がおありですから、てっきりその選択はなさらないものかと」
「あったね、そういうの。結婚後、レベッカは対外的には上流階級に返り咲くことになるけど、屋敷内での内実はいつでも抱けるぼくの女中の一人のままなにも変わらないし、なにも変えてもらいたくないんだ。そこさえ呑んでもらえたら、ぼくは気にしない。絶対に増長したりしないところまで教育が進めばレベッカのことはレベッカと呼んでもいいけど、いまはただのレベッカなんだよ」

 令息はほがらかにそう口にした。
 没落貴族であるレベッカがウィルとの結婚によって体面を取り戻すのは一向に構わないが、肉体的にも精神的にもウィルに組み敷かれた上下関係はくびきのように女中という立場で一生背負ってもらわないと困るのである。

「なるほど承知しました。についてはあくまで生涯ご主人さまに身も心も捧げたいち女中として教育するのがよろしうございますね。結婚後それをどう維持なさるかの施策も必要かと存じますわ」
「結婚後の施策? うん、その辺も含めての話になるかな――で、だよ」

 ウィルはそこで裸の身を乗り出した。

「ぼくの将来の奥さんの教育や結婚後の夜の生活ついては全面的にトリスと相談しながら進めるから、トリスには一生ぼくの性の捌け口になってもらいたいんだ。もちろん女中長の地位を降りても屋敷から去ることは認められない」
「……っ、魅力的な条件ですわね。将来の奥方さまということは、もしレベッカでなくなったとしても、わたしにご指導をお任せいただけるということでよろしうございますか?」
「あ、うん。その辺はあんまり考えてなかったけど、それでいいよ」

 ウィルがそう答えると、トリスは顎に手を当て、ゆっくりとうつむく。相当に吟味しているらしい――やがて顔を上げた。

「ご主人さま、ソフィアについても一生伯爵家から離反しないように躾ける必要があると思いますの」
「ソ、ソフィアも? だってソフィアはもう――」

 ウィルは「ぼくのことを好きになってくれたよ」と続けようとして、トリスが口を挟む。

「現状われわれの命運を握っているのは予言の神巫マリエルです。マリエルに対する保険はソフィアの身柄しかありません。教育は必須ですわ」
「う、うーん……ソフィアについてはぼくの方でなんとかする。ぼくはソフィアを自分で教育する自信があるんだ」

 令息はそう言い張った。
 あの気高き銀髪の少女が屋敷から一生離れられないようにする方法などウィルには一つしかない。少女と約束した――マリエルを取り戻した後に銀狼族を存続させるためにソフィアを孕ませること、いや孕ませ続けることだけである。
 女中を孕ませないために避妊薬まで作ったトリスはそこには噛ませられないのだ。

「ご主人さまがそこまで仰られるなら……ただ、わたしが立ち会えないとなりますと……」

 女中長がソフィアの教育に明らかな未練を抱いていることは、目を閉じ思案する女の様子から窺えた。

(この際、使えるものはなんでも使ってやれ!)

 そう決心し、口を開く。

「そうだ。結婚後、ぼくとぼくの奥さんとの初夜のにトリスを任命するよ」

 家どうしの結びつきを重要視する貴族社会においては、両家の血縁関係が確実に結ばれたことを確認する初夜の立会人なるかびの生えた制度があるが、ウィルは妻との初夜を見世物にすることすら交渉の条件に上乗せしたのだ。

(これでどうだっ!?)

 切り札のはずだったのだが、うつむいたまま目を閉じ、固まったように身じろぎしないトリスに、ウィルは焦り、余計なことを思いついてしまう。

「初夜を終えた後、上手く両家の関係を結べたことを確認できたか、トリスと話し合う時間も設けよう――反省会というか、その肌と肌で……って、え?」

 そこまで口をすべらせたとき、トリスの閉じた瞼がわずかに震えていたことに気がついた。次の瞬間、トリスがくわっと目を見開き、その肩が跳ねた。

「うわっ!?」
「貴族でもないわたしが、ご主人さまと奥方さまの初夜の立会人に――」

 トリスの声には隠しきれない興奮が滲み出している。
 屋敷の女中たちとの関係を受け入れるよう伴侶を徹底教育したその成果をトリスの前で披露することになる――その生々しさにようやくウィルの想像が追いついてきた。

(あれ? ぼく、もしかしてやっちまった?)

 やがて女中長はうつむいたままブルブルっと小刻みに身体を震わせた後――

「……………………ください」
「へ?」

 女はいきなり腰を屈め、ググッと顔を寄せてきた。喜色まみれのすごい表情をしている。

「ご主人さまの初夜の立会人になることを書面にてご確約ください! それならば、わたしの方も女中長であろうとなかろうと一生ご主人さまにお仕えすることを明記させて頂きますわ!?」

 令息はいまさらのように条件を釣り上げすぎたことに思い至る。

「ト、トリス。その、初夜の後の反省会は……やっぱり……」

 穴があったら入りたいくらいの気恥ずかしさを覚えながら、トリスと肌で語らうことになるだろう。

「あら、わたしとしたことが。もちろん、その部分についても明記してくださいまし! 奥方さまと済まされた後、わたしは何時まででも起きてお待ちしておりますので」
(うわわわああ……)

 手遅れだったことに気がついた。
 興奮を押し殺すように粛々と準備が進められる。
 元が領主の一族のための隠し部屋であり――これも荘園領主の館マナーハウス時代から引き継がれたらしい――木製の机の引き出しからは、ごく当たり前のように羊皮紙が出てきた。
 その場で契約書を直ちに二通作成して、さらさらとサインをする。
 性器を勃たせたまま全裸で契約書を取り交わすなど、人生で最初で最後の経験であろう。興奮が抑えられないのだ。
 これで、どんな風に妻を抱いたか羞恥に晒された指導を受けながら、トリスの穴の中に入ることになるだろう。

(でも、でも!)

 ウィルは羞恥心を振り払うようにブンブンと首を振る。ずっと張り詰めっぱなしの男性器も左右に揺れた。

(ついに、ついに! トリスを手に入れた。これでロゼが女中長になろうとも、この屋敷が潰れない限りトリスは一生ぼくのものだ!)

 ウィルが裸の尻をもたせかけるベッドの縁の左右には、トリスの黒い下着とロゼの白の下着が広げられている。それを見下ろしながら、少年は口を開く。

必ず契約を履行してもらうからね」
「はい、必ず契約を履行いたします」

 両者ともに熱意の方向性が異なりながらも、相手に絶対に約束を守らせるという熱量の高さは変わらない。
 貴族であるウィルはそのけんにかけて契約を守るし、同時にトリスは絶対にこういう契約を破らないという確信がある。

(トリスは、ロゼが女中長になるどころか、もし、もし……そういうことになっても、ずっと屋敷に残り続けてくれるんだっ!)

 少年はずっと欲しかった女の人生を手に入れたことが誇らしくてたまらない。

「トリス、早速だけど、こ、これをなんとかして!」

 ウィルは股を開いて自らのいきり立った股間を誇示するように指差すと、女の喉が鳴った。

「よろしいのですか?」
「うん、良いよ。これから――あれだけ盛大に見送ってくれた女中たちと顔を合わせてお手つきしないといけないんだ。自信つけさせて」
「かしこまりましたわ」

 婉然と微笑んだトリスは絨毯に膝をつき、上体を屈める。
 少年の両のふとももに白いエプロンの左右からはみ出した大きな胸が柔らかく潰れたのだ――

ご感想をお待ちしております。
これでも結構文章削ったのですが、冗長すぎないかとか若干気になってます。なにか気がついたことがあればコメントください。
一応、次回濡れ場の予定です。

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