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第五十六話「女王蜂の役得」

 伯爵家の令息ウィルの背は、屋敷の女中たちのだいたい平均くらいにあたるだろうか――マイヤやリサ・サリといった小柄な女中たちよりも高く、ブリタニーやジュディスといった長身あるいは大柄な女中たちよりもずっと低い。
 中でもいま、年代物の彫刻の刻まれた豪壮な天蓋付きのベッドを背に立っている屋敷の女中長トリスはひときわ高く、令息との身長差は実に頭一つ分以上にもなるだろう――女の黒地のお仕着せに包まれた大きな胸の谷間を橋渡しする純白のエプロンが女中服姿の令息の小鼻に触れ合いそうになっているのだ。

(相変わらず、おっきいや……)

 この『大きい』というのは、白地のエプロンの左右からはみ出し、少年の視界の両隅を強烈に圧迫する黒地の豊満な柔肉の張り出しに対してである。
 ふと女が呼吸した拍子に、黒い布地の山の頂がたぷんと挑発的に揺れて頬に当たりそうになり、ウィルは切羽詰まって口を開く。

「ト、トリス、指導レッスンとかそういうのはもう無しにして!」
「――無しということは、閨の教育係はお役目御免ということになるのですか?」

 ぱちくりと淡褐色ヘーゼルの瞳をまばたきさせたトリスの声にはことの外、心外でかつ不本意そうな響きが含まれていた。
 ウィルの想像以上にトリスは閨の教育係という立場に執着があるらしく、自身の胸元に手を添え、ぐぐっと上体を屈めてほんを促してくる。

(そういうことじゃないっていうか、ぼくは、いまそれどころじゃないんだってば!)

 窓を閉め切った馬車の中で女中たちの芳しい薫りに包まれてきただけに、若い雄の股間はいきり勃ち、スカートを持ち上げるほど狂おしく女が欲しくてたまらないのだ。
 顔に覆い被さってくる豊かな胸の張り出しを――

、これ以上我慢なんてできるもんか!?)

 少年はぐわっといきなり両手でわしづかみにしたのだ。
 ぐにゅりと柔肉が指の間から溢れ出す。

「まあっ」

 トリスは喜色混じりの声をあげた。

(うおおおおぅ!? これだよ! ずっと自分からこうしたかったんだよ!?)

 ワインの詰まった大きな革袋でも持ち上げるような、たっぷんとした量感――

(重いや、そして相変わらず、すっごい柔らかいよ!)

 令息がぐにぐにとその指を動かすたびに、胸の上下を橋渡しするエプロンの細い帯が、その左右から溢れ出した柔肉のうねりに寄せられて引きれ、汗の臭いの混じった女の芳香を撒き散らす。

「はあっ、はあっ」

 ふとウィルは記憶の中に乳の匂いを嗅いだ気がした。それは元乳母トリスの乳房にしゃぶりついた幼少期の残り香に過ぎないのだが――
 思わずウィルが軽く鼻をひくつかせていると、

「丸一日以上、風呂にも入らない身を捧げる年増をどうかお許しください……」

 どうやら女中長はそのことを本気で恥じ入っているらしく、珍しく顔に申し訳なさそうな朱色を浮かべていた。
 さりとて裏方の女中たちの長であり、実質的に屋敷を取り仕切るトリスは、屋敷を守るために身体を張った令息の最初の慰みになる役得パースを手放す気はないらしく、むしろ触りやすいよう胸を差し出してくる始末であった。
 ほのかに薔薇香水の香るいつもの女中長に比べると、どこか動物的なフェロモンの匂いが強く感じられるだろうか。

「……いいって。ぼくなんかもっと汗まみれだろうし」
「いいえ、ご主人さまの方はお着替えのついでに、軽く身体をお拭きさせていただきましたわ」
「あ、そうなんだ! ありがとね」
「いえ、女中なのですから当然ですわ。ご主人さまのご成長ぶりも拝見できて、それはもう楽しいお着替えでした」
「え?」

 令息はぎくりと指を震わせて、つかんだ女の胸の谷間から、スカートを持ち上げる自身のさきを見下ろした。

「その、もしかしてぼく、いまみたいになってた?」
「それはもうお元気で。ロゼなどは、ご主人さまのお顔を拭きながら、わざとらしく指の間からチラチラと覗いておりましたわ――」
「うわっちゃあ!?」

 頭を抱えたくなるほど猛烈に甘酸っぱい羞恥心がこみ上げてくる。幼少期からプラトニックな関係を築いてきた血の繋がらない妹役に、肉欲の象徴が自己主張する様を見られたのだから――

「ご心配なく、大事な部分はわたしが直接お拭きさせていただきましたので。まだ主人に身も捧げてない見習いには任せられませんもの」

 女中長の価値観を滲ませた言葉ではあるが、予言の神巫マリエルに屋敷のすべての女中を手折るよう求められている状況下ではどうしようもなく正しい。
 ウィルにお手つきされて初めて、本当の意味で屋敷の体制の一部として組み込まれ、重要な仕事を任せられるのである。

「あの子、ずいぶん胸が膨らんできたでしょう?」
「えっ、あ、うん。もう、びっくりした……」

 トリスが好きに胸を揉ませながら、血の繋がったロゼの発育について言及したのだからそれはもう驚いた。

「ちょうど当時のわたしと同じくらいですわ。これからもっと大きくなりますとも」

 トリスはそう断言する。

「え、いまのロゼが当時のトリスくらいで、これから、さらに、もっと大きく!?」
「はい。まだ芯の硬い小娘の胸ですから、揉みほぐしてやってくださいまし」

 女が自らの血縁者の貞操を差し出す生々しさに、思わずウィルの指先にかかる力が強まった。黒地のお仕着せの上からでも明らかに乳首だと分かる硬くなったしこりが指の間からはみ出した。
 トリスはびくっと身体を震わせつつ、ウィルの耳元に言葉を忍ばせる。

「ん、ご主人さま、やはり閨の教育係は続けさせていただきたく。いくら成長しようとも男を知らないロゼが、肌と肌の語らいを通じて女を支配する帝王学をご主人さまにお教えすることには無理がありますもの」
「はあっ、はあっ! 今日はぼく、手ほどきとかじゃなくて純粋にトリスの身体を味わいたいんだよ!?」

 自分はもう訓練馬ポニーに跨がっている初心者ではない――そのことを強調しようと杭のようにきつりつした股間の先端を女の股に押しつけようとした。
 だが、身長差からして膝を伸ばしたトリスの足の付け根にそれが届くはずもなく、代わりに女のふとももの間をすり抜け、ピン留めするように亀頭が女の股下のスカート生地に突き刺さる。
 するとトリスはぞくぞくと――股に当たらずとも心には刺さったようで、身を震わせた。

「ああ……ご主人さまが『』と仰られるのをお聞きして、このトリス大層安心させていだだきました」

 あくまで閨の教育係であることにこだわる元家庭教師ガヴァネスは、その豊かな胸を好きに触らせながら紅い唇にねっとりとした笑みをたたえ、言質を取りにかかる。

「ああ、もう! ぼくの好きなようにさせてってば!」
「はい。承知いたしました。女の乳房を握りしめながら、ご自身のお望みを押し通すしゅに富んださりよう、感服いたしましたわ。随分とご成長なさいましたわね?」
「だってぼく、辺境領の後継ぎでしょ?これから屋敷の女の子たちにいっぱいお手つきしないといけないもん。閨の教育係ならぼくに自信をつけさせてくれないと!」
「まあ!? そのように仰られるなんておずるいですわ!」

 ウィルの居直りのような理屈と主張に、女中長は嬉しそうに下半身のスカートを身じろぎさせ、その少年よりも大ぶりな腰が少年を受け入れるように優雅に左右に開かれた気配がした。
 腰の先端に触れる感触に少年が思わずビクッと顎を震わせる。トリスがつま先を外に向け、踵と踵を合わせるバレエの基本姿勢ターンアウトを取ったのだと知れた。
 真っ直ぐ伸びた女のふとももの奥側が貼り合わされたものだから、女の股の下に突き刺した少年の亀頭の周囲が、離さじと執着するように布越しにぴちっと締めつけられることになる。

(うくっ……)

 喘ぐように持ち上がった少年の顎先に、女は背を丸め顔を寄せる。

「では、なさりたいことを何なりとお命じください。くわえろとお命じになるなら、お咥えいたします。腰を振れとお命じになるなら、腰をお振りいたします。わたしの方からご主人さまをやり込めようとすることは一切いたしません。ご主人さまの意図を曲解するつもりもございませんのでご安心を――」
「へえ!? どうしたの? いつになく従順じゃない!?」

 自身の要求が満額回答以上で受け入れられた驚きに、ウィルは素っ頓狂な声をあげた。

「いつだってわたしはご主人さまに従順なつもりですが――あら、そのようなお顔をなさらないでくださいまし。強いて申し上げるなら、成長されたご主人さまをルクロイの村で拝見して、わざわざそのおつのめるようなことをするべきではないと悟った次第にございますわ」

 ウィルはそれを聞いて破顔する。
 たとえ性的な意味合いに限られようとも、ここまでトリスに主人としての成長を認められ、自主性を尊重されたことはおよそ記憶にない。

「だったら、ぼくのペースで好きなことを好きなだけさせてもらうからね!?」
「ふふ、もちろんですとも」
「じゃあ、まず口づけしたいから顔を近づけてくれる?」
「仰せのままに」

 トリスはつま先を左右に広げ――これもバレエの基本姿勢なのだろう――真っ直ぐ腰と背を伸ばしたまま優雅に膝を折る。

「うっ」

 少年の敏感に膨らんだ竿先が女の股間に乗り上げ、上下に振動することになる。
 顎を上げた少年のすぐ目の前に、大きな三つ編みを結った気品のある女の顔がすうっと降りてきた。
 女中長の長い睫毛は伏せられており「ご自由になさいませ」とばかりに黒薔薇のような芳香薫る紅い唇が差し出されている。
 身長差があるだけに、こうして真正面から同じ目線で見つめるのは新鮮である。

(……いつも思うけど、トリスって本当に美人だよね)

 目を閉じているのを良いことに、息のかかる間合いでトリスの美貌をじろじろと凝視していると改めて気がつくことがあった。

(トリスとロゼってますます似てきた気がする。前は瞳の色が違うからそこまで意識してなかったけど、目を閉じると本当にそう思う。なによりもこの胸だよ!)

 二人の大きく張り出した胸が圧倒的なまでの説得力をもって濃い血の繋がりを証明しているように思えて仕方がないのだ。わしづかみにする両手の指にググッと熱がこもり、唇を近づける。

「トリスは舌を使わなくて良いからね」

 そう伝えてから、白い顔に映える女の紅い唇に吸いついた。
 ぴちゃりと黒薔薇のような艷女の唇の表面を、年若い少年の唇がねっとりとなぶっていく。女の粘膜にひっつく感触が上等なチーズのように濃厚で心地良い。
 主人に仕えることを第一義とする女中の唇や肌からは、屋敷の高価な調度品に触れているような満足感がもたらされるのだ。
 ぬるりと唇の隙間に舌を差し入れても、ウィルの言いつけどおり舌が出迎えてきたりはしない。
 代わりに女の口内からは、もどかしそうな体温が伝わってくる。

(だって、いまトリスに舌を使わせたら、なんだか分かんないうちに出ちゃいそうだもん)

 青い性欲が腰に重く溜まりすぎて男性器がビクビクと揺れており、気を抜けば暴発してしまいそうなほど敏感になっているのだ。
 豊かな胸を好き放題まさぐりながら、口内の感触をひととおり味わった後、唇を離した。
 いつもなら濃い唾液の橋がかかるところ、今回は唇を離す間際に――女中長もそれには応じて、チュっとついばみ合い、唾液の糸が短く切れた。
 そしてトリスは従順さを示すようにこくんと喉を鳴らした。ウィルの与えた唾液を飲み込んだのだ。

「すぐに挿れたい! こっちにお尻を向けてベッドに手をついてもらえるかな?」

 令息は拙速にそう口にした。
 もはやこれ以上の前戯はまどろっこしい。

「仰せのままに。じっとしている方がお好みということにございますね?」
「そういうこと! ぼくが脱がすからね」

 頭一つ分以上も背の高い女性は艶やかな笑みを浮かべて頷くと、ウィルに背を向け、腰を屈めてベッドの縁に両手をついた。
 黒いドレス地と腰のくびれを強調するような白いエプロンの帯に包まれたウィルよりも大きな尻が突き出される格好となる。
 長身の女中が少し膝を曲げ、まるでウィルのために誂えられた夜具のようにその腰の高さぴったりに合わせられたとき、興奮でビクンビクンと亀頭が揺れた。

(うわ、ゾクゾクしてきた! 自分より背の高い女中の、このお尻の横幅がたまらないんだよね!)

 令息は身を屈め、女中長の足首まであるスカートの裾を、白いペティコートごとむんずとつかみ、めくり上げる。
 黒いガーターベルトの巻かれた腰と黒下着に包まれた尻が露わになり、背には白いペティコートやスリップがまるで大輪の花びらのように眼下に咲いているのが見えた。
 令息は息を荒げながら自分より大きな女の腰の左右をつかみ、尻を包む下着を引き下ろす。
 黒下着の股のクロッチが剥がれるときに、くちゅりと粘着質な音がして、白い尻の谷間が露わになった。この瞬間がたまらない。三十路手前の艷女の尻の谷間からじゃこうのようにせ返る芳香が漂ってくる。これまでで一番女の匂いがきついかもしれない。

(ごくっ……)

 ウィルはトリスの下着を引き下ろし、足先から引き抜いた。
 女中服姿の少年は、妙な倒錯感を覚えつつも慌ただしく男女の性器を隔てる自身のスカートの前をめくり、目の前の腰の上に被せかける。
 夜具となる女の大きな白い尻がすっぽりと覆い包まれ、互いの陰部がまるで見えなくなった。
 そのままではなんだか寂しい気がしたので、先ほど引き抜いたトリスの下着を尻に被せかけたスカートの上に広げて置いた。
 さらにウィルは片手をスカートのポケットに差し込む。そこには湿り気を帯びたロゼの下着が入っている。黒地のトリスの下着の下に白地のロゼの下着を並べた。
 ロゼの白下着はサイズが一回り小さく、匂いもそれほどしない。艷女の香り薫るトリスの黒下着に比べると、どうしても未通の小娘の清純さや小便臭さのようなものは否めないかもしれない。
 さきほど馬車の中で身を伏せているときに見た女中たちのスカートの中身が思い起こされる。
 女中長トリスとその血縁者ロゼが左右にスカートの中の腰を並べており、黒い隠毛がカンテラの火に炙られるようにテラテラと光っていた。

(ぼくはいま、その片方を性の捌け口にしようとしているんだ!)

 そのまま腰を押し出して、トリスの女芯を腰の先端で貫こうとしたが、照準を外し尻肉に突き刺さる。

(は、入らない。はやく挿れたいのに!)

 中が見えないというのはこんなにもどかしいものなのか――
 気ばかりが急いて、尻の上に広げられた二つの下着を眺めながら、逆に色々な考えが頭をよぎる。
 トリスとロゼは姉妹なのか母娘なのか。年齢的にはどちらでもあり得よう。ただ、二人の間に感じる微妙な確執はただの歳の離れた姉妹のそれとは思えない。

(姉妹でここまで似ているなら片親違いなんてことはないだろうし、家族でロゼだけ瞳の色が赤いってのも妙な話だもの……)

 つまりウィルの想像どおり母娘であれば、幼少期にロゼのものであった乳を吸い、成長した後にはロゼの産まれた穴に男根を穿ち、果てていたことになる。

(うおおお!?)

 そのことに自覚的になったらひどく興奮してきて張り詰めた亀頭が、まったく湿っていないすぼまりの方に一度めり込み、つるりと尻の上を滑る。

「あんっ! ……ま、まあ!? そちらの穴をご所望なのですか?」

 トリスが驚いた声を発し、裏筋を押しつけている女の尻の谷間がゾクゾクと震えている。

(え! ぼく、いまトリスのお尻の穴に挿れようとしちゃった!?)
「ご主人さまがどうしてもと仰るならば否とは申しませんが、お使いになる準備が整っておりませんので如何いかがしたものかと――」

 準備というのは直腸の洗浄なのだろうか。いくらトリスといえど帰宅した直後にそのような手はずが整っているわけがない。

「い、いや……そういうつもりじゃなかったんだけど……」

 いつかはトリスの尻の穴を使う日が来るのかもしれないが、それは今ではなく、なにか大事な節目の機会に取っておくべきな気がしているのだ。

「てっきりご主人さまが、この期に及んで年増を焦らそうという悪魔の所業をなさっているのかと思いましたわ」

 スカート生地を覆い被せられた尻の山が動き、ふいにぬるっと湿った場所をかすめた。

「お腰を合わせますわね?」

 女がそう口にした次の瞬間、にゅるりと粘着質で温かい締めつけに亀頭が包み込まれ――

(うお、おおおおッ!)

 女体の中心軸を貫いた快楽と満足感が腰から脊髄に駆け上る。いままで満たされなかったものが一気に満たされる。

(これがトリスの中なんだよォ! うわあ、気持ちいいィ!)

 充血した少年の海綿体に、滴るほど濡れた膣の襞の一枚一枚にねっとりと絡みついていくあの体温と感触――
 自分より幅広の――二つの下着の並べられた尻の左右をつかみ、限界までググッと女の谷間に性器を押しつけるこのカタルシス――奥まで刺し貫いている感触がこの上なく心地よい。
 トリスの方も長らく待たされた気持ちが強いのか、ベットの縁をつかんだまま顎を上げ、一度ひゅっと短く息を吸い込んだ後、うなじを震わせている。

「ぼく、ようやく屋敷に戻ってきたんだなあって思っちゃった!」

 領地の屋敷とは周辺地域一帯の支配の象徴である。ならば、この領地の屋敷を実質的に支配する女中長の上に跨ってこそ、ウィルの帰還は完遂するのであろう。
 改めてそう実感した直後、一つの言葉が口を突いて出る。

「トリス、一度、済ませた後、今後について話をしよう」

 そう言い放つと、明らかに性行為の途中中断など望んでいない女の背中からは困惑が伝わってくる。
 ウィル自身、たった一度で満足できるわけもないが、より大きな支配の快楽を得るためにどうしても必要なことなのだ。

「……本来であれば言葉など不粋と申し上げたいところですが、為さりたいようにというお約束でしたわね。いったい何のお話なのか気になりますわ」
「んとね……」

 見下ろす尻の上には二つの下着が上下に並んでいる。こうして身体の一部で繋がったまま、話し合いのための話し合いが始まったのだ。
 トリスがいま一番聞かれたくないこと、そして答えられないこと――それはロゼとの血縁関係であろう。まともに聞いてまともに答えが返ってくるとは思えない。
 だからウィルは代わりにこう口にする。

「要するにね、トリス。今後ぼくが自分の妻を迎えた後も屋敷の女中たちには夜伽を続けてもらいたい。特にトリス、きみには一生、ぼくの精の捌け口になってもらいたいんだ」

 身も蓋もない要求である。
 だが、愛だの情だのを持ち出すよりよほどトリスの心に届くという確信があった。
 事実、ウィルの要求をじいんと味わうようにトリスの背が震え、腰の中がにゅるりと蠕動し、少年の亀頭が一回り以上も年上の女の粘膜で揉まれる。

「ト、トリス、動いちゃダメだって!」
「ん、これは失礼を。、喜んで夜伽のお相手を務めさせていただきますわ」

 もしこれが愛人ミストレスの返答であれば満点なのであろう。だが、トリスはウィルに身も心も捧げた女中なのである。

(その条件じゃダメだ。ぼくが安心してトリスを抱き続けられるという保証がないじゃないか)

 ウィルの考えとしては、将来迎える妻が納得しようがしまいが、基本原則として無条件にトリスは性交を提供するべきなのである。

「すでにわたしは身も心も捧げると誓っております。わたしがこの立場にある限り、屋敷の女中たちを代表して、ご主人さまにはこの身を自由にお使いいただく権利がおありですわ」

 トリスはさらに踏み込んだ発言をしてきたが、令息はそれでも納得がいかない。

「それなら、これも聞いておかないといけない。もし女中長でなくなったとしても、トリスは屋敷に留まり、ずっとぼくの夜伽の相手を務めてくれる?」
「っ……」

 これこそが大事なことなのだ。
 グッと腰を押しつけると、トリスの背中が一瞬硬直し、男性器に絡みつく膣の中が強ばり、接合部からぐじゅっと音がした。

「……なるほどこれは厄介な話になりましたわ。ロゼが女中長の地位に就くことを狙っておりますからね。そのために、あの子は三年かけてシャルロッテで女王蜂首席卒業生に……」

 チェスで妙手でも打たれたとばかりにトリスは首を振る。ロゼという駒が手の内に戻ってきて初めて打てるようになった手であり、敵陣に乗り込んだ歩兵ポーン女王クイーンへと昇格プロモーションする権利を得るのであった。

「本音を申し上げると、わたしにも意地がございますから女中長を解任された時点でお暇をいただきたい気持ちがございましたわ」
「ええ!? そんなのダメに決まっているじゃんか!?」

 少年は元乳母にしきばむ。もしそうなればどれほどの喪失感が伴うか想像もつかない。

「もし最初からロゼに負けたら辞めるつもりならロゼに勝ち目なんてないよ。トリスは絶対負けない条件でロゼを勝負に挑ませたいの?」
「……っ」

 急所を突かれたようにトリスは背を震わせた。そして深々と溜息をついた。一瞬の緊張から一転、膣の中が揺蕩たゆたうように緩まる。

「ああ、子供の成長ってどうしてこうも早いのでしょう。避妊薬作りなど現状わたしにしかできないお仕事もありますものね」

 トリスはベッドの縁から片手を離し、下腹のあたりをゆっくりとさする。その行為には様々な意味が含まれているように思えた。
 トリスがそうしている間ふと、以前ロゼから受け取った手紙を思い出した。
 シャルロッテ女学院で行われている伝統的な卒業研究の一つが蜂の巣の生態観察だとか。トリスからもそのような話を聞いており、随分と学術的なテーマを扱っていると感じたものだ。
 ――小さな巣で新しく生まれ、そのまま巣に残った女王蜂は、母親である女王蜂と殺しあうそうだ。
 ただロゼによると、巣の規模がある程度大きいと二匹の女王蜂が共存する場合もあるらしい。

「ロゼのことはそれなりに買ってはおりますが、負ける気はございません」

 シャルロッテ女学院の元女王蜂トリスは、そう言い切った。
 四十人もの女中のいる伯爵家ならば、二人が並び立つ未来もあるのではないかとウィルは考えている。

「ですが、いつしかロゼよりもわたしの方がお役に立てなくなる日が必ずやってきます。だれしも老いからは逃れられませんもの。ご主人さまはいずれ、いずれわたしよりもロゼを好んでお抱きになることでしょう。わたしとて、老いた身体をいつまでも差し出す恥を晒す気はございませんもの」

 ――自然界においても、やがて共存していた女王蜂が老いたとき、徐々に巣の働き蜂から厄介者扱いされ、ときに若い雄蜂の交尾の練習台になるところまで落ちぶれるのだとか。
 それがたまらなく残酷でたまらなく美しいと語っていたのは、トリスとロゼのどちらであっただろうか――
 やがて、女中長はどこか遠い目をしてウィルの方を振り向いた。
 どうやら苦笑を浮かべているらしい。膣内もゆったりと脈動し膣壁に亀頭が嬲られて、令息はうっと息を漏らした。

「そうですね。結論から申し上げますと、ご主人さまのお望みどおりお暇をいただく権利を放棄するかは、お仕事の役得パースによります」

 意外な言葉を聞いて、ウィルは目を丸くする。
 たとえば一般的な料理人コックの役得には――リッタはあまり活用していないようだが――廃棄処分になった屋敷の高級食材を自分のものにできるというものがある。

「……役得ってトリスにしては随分即物的だね?」
「お金や物ではございませんよ。分不相応な仮定となりますが、たとえお申し出を頂いたとしてもご主人さまの愛人ミストレスになることは辞退させていただきます」

 伯爵家の令息は悲しそうに下唇を突き出す

「ご主人さま、わたしはあくまでお屋敷の仕事の一部として女中たちの性を提供することに面白みと生き甲斐を見出しているのでございます。ですから、なにかご主人さまの方で、を考えてくださいまし」
「ッ!? そうか、分かったよ!」

 少年の脳裏に王手チェックに至る一つの道筋が見えたのだ。
 ならば、あとは腰に重く溜まった性欲を発散させるだけ――そうでないとこれ以上の手は打ち続けられない。もう頭が働かないのだ。
 令息はトリスの大きな尻を強くわしづかみにすると、ゆっくりと腰を振り始める。
 小さな腰がより大きな腰にぶつかって一定のリズムで乾いた音を立て、同時に内部がぐじゅっぐじゅっと快楽のうねりをあげる。
 散々待たされた上に女中服を着ている倒錯感も手伝ってか、いつもより快楽の絶頂に確実に近い位置にいる。
 亀頭がものすごく敏感になっており、玉袋の方も膨らんでいる気がする。いつもより睾丸を女の尻に打ちつけている感触が強いのだ。ちょっとした刺激で果ててしまいかねない。
 トリスは自分から腰を動かしたりしないが、膣の中が自律的に蠕動するのは止めようがないらしく別の生き物のように複雑に絡みついてくる。スカートの布地に快楽の接合部が隠れてしまっているせいか、一層そのように感じる。
 ぬうっと尻の谷間から見えない男性器をぎりぎりまで引き抜き、すぐさま押しつける。にゅるりと大ぶりな尻肉の真ん中を少年の性器が刺し貫く。

(うっひゃああ!?)
「ご主人さまっ、腰を合わせた方が良いときはいつでも仰ってくださいまし」
「う、ううん、このままでいいよ。十分気持ちいいし」

 十分気持ちが良いというか、どうせ達するなら、このまま自分のペースで達したい。
 初めての性行為のときならばすぐに果ててしまうなど男のけんにかけて絶対に避けたいことだったが、いまのウィルにはそれを受け入れられる度量がある。

「ああ、もうすぐいきそう!」
「えっ」

 トリスは驚いたような声を発した。女中長が動かないことを良いことに、先に一人だけ達しようとしているのだから。
 腰をひときわ強く突き込んだ瞬間、亀頭の先端が割れた。
 ここに至るまでどれほど待たされたことだろう。

(うおおおおおぉ!)

 どくんどくん――女の膣内に大量の精液を噴出していく。
 快楽が少年の脳を焼き焦がす。びくんびくんと身体を震わせながら、女中長の尻に腰の先端を押しつける。
 ルクロイの村で命の危険に晒されてからの初めての性交であり、一回一回の射精の律動で放たれる精液が濃い気がする。

「はあ、はあ、はあ……」

 どくっどくっと少年の背筋に快楽が流れ込むたびにトリスの膣内に白濁が充填されていく。
 ちゅぽんと膣内から男性器を抜き取った。
 男性器が縦に振動し、ふわっさと覆い被さった布地が達したばかりの亀頭の上を滑り、自身のスカートを持ち上げる舳先となったのだ。

(ああ、気持ち良かったァー!)

 ルクロイの村以降、あまりに気忙しかった。屋敷で安全な居場所を確保し――トリスの中に精を解き放ってようやくひと息つくことができた気がする。
 だがそれはあくまで精神的な話であって、スカートを持ち上げる肉の棒は精を放ったばかりだというのに微塵も衰えてない。張り詰めた亀頭が次の入り口を求めて、びくんびくんと武者震いを起こしているのだ。ウィル自身、ここまで元気なのはちょっと記憶にない。

「うわあ、今日凄いや……じゃあ、トリス。話の続きをしようか?」

 勃起したままにっこりと微笑むウィルに、

「少なくとも五、六回は女を屈服させる精力がおありでしょうに。そして、ここにはいますぐにでも屈服させられることを望む女中がおりますのに。この状況でたった一回というのは、年増の生殺しのような話にございますわ」

 振り向いたトリスは情事後の衣服の乱れを繕いながら、未練たらしそうな目で、まだテラテラと濡れるウィルの怒張を見下ろしている。

「年増というものはどうしようもない生き物で、三十も近くなれば歳をとるほどにその性欲は増していくと言われております。わたしはいま、それを実感させられておりますわ」

 そろそろ令息は――もういい加減、着慣れない女中服が邪魔くさく感じられて仕方がなくなって、身を屈めてスカートの裾をつかみ、腕を交差させて黒地のお仕着せを一気に脱いでしまう。
 ふと、ベッドの横のサイドデーブルの上に置かれている鏡に視線が向かう。

(うわ、絵面がきつい!)

 まったく無い胸の上にはご丁寧に刺繍入りの胸当てまで巻かれており、女物の靴を履いた足は白い長靴下で包まれている。
 長靴下を釣り上げるガーターベルトの股の間には、射精を済ませたばかりでなお精力を失わぬ男性の象徴が雄々しく突き立っていたのだから。

「ああ、もう! 変な性癖に目覚めてしまいそうだよ!?」

 令息は大急ぎで自身の胸当てを剥ぎ取り、靴を脱ぎ散らかす。そしてガチャガチャとガーターベルトの留め具を外そうとする。

「ああ……額縁に入れて飾っておきたいくらいですのに……」
「勘弁してよ! せめて、この部屋にいるときくらいは屋敷の主人として振る舞いたいもん!」

 女中服を着ているとどうしても意識がそこに引きづられる。
 女中長と交渉する以上、一介の女中の立場は脱ぎ捨てなければならないのだ。

「承知しました。ご主人さまの心の平静のためにも、今後はそのように取り計らいましょう。あとでご主人さまのお洋服をご用意するようリサ・サリに命じておきます」

 女中長は令息の足元に跪いて長靴下を脱ぐのを手伝いはじめた。
 このやり取りを経て、この部屋にいるときは普段のウィルの格好をして、部屋の外に出るときは女中ウィルマとして振る舞う二重生活の枠組みが固まったのだ。
 こうしてウィルは全裸になって天蓋付きのベッドに視線を落とすと、ベッドの縁にはなぜかトリスの黒い下着とロゼの白い下着が両者の関係を物語るように少し距離を開けて広げて置かれているのが見えた。
 ウィルは二つの下着の間に裸の尻を落とし、目の前に見えるベッドに備え付けの足置きオットマンを指差す。

「ああ、脱ぎ終わってせいせいした。トリスもそこに座って」

 女中長は素直に従い、ベッドの横幅ほどある足置きの真ん中に腰を下ろした。二人の視線はちょうど同じくらいの高さになる。
 トリスは気持ち多少呼吸が荒いくらいで、見かけはもういつもの女中長と変わりがない――と思ったら、その足元にはウィルの放った精液が赤い絨毯の上に点々と白く零れていた。
 こうして全裸で怒張は天を指したままの少年と、情事の残り香をスカートの奥に仕舞いきれない長身の女中長が座って向かい合い、両者の話し合いが始まったのだ。

続きを書くのが随分と遅くなってすみませんでした。以前ちらっとツイートしたのですが雨漏りをしまして、結局ゴタゴタと引っ越しました。過去にツイートした件も含めて色々大変な時期だったのですが、住む場所が落ち着かないとこんなにメンタル参るんだなと実感した次第です。

ちなみに個人的には今回のような官能色を漂わせながら、官能面に寄せすぎない回も好きだったりするのですが、もどかしくて好みじゃないとか、これはこれで楽しめるとかご意見頂けるとありがたいです。(一応がっつり官能面に寄せる回も別に用意する予定です。そちらはずっと前から書きたい展開なんですけどなかなかたどり着けずにいます)



第五十六話「女王蜂の役得」へのコメント:
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