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第十五話「女中たちの伽(上)」

 夕食をったあと自室に戻ると、ちょうど客間女中フローラがウィルのベッドから起き出してくるところであった。
 寝起きのフローラからは甘い女の汗の匂いとともにだるい色気が漂ってくる。女はゆるくウェーブのかかった長い金髪をかきあげ、ぼうっと目をこすっていた。

「やあ、フローラ」

 ウィルがそう声をかけると、金髪の乙女は肩を跳ね上げ、

「ひゃあっ!? な、なんでここに――――あれ? ベッドがすごく豪華……」

 自分の眠っている天蓋付きのベッドを見回していた。

「あ、そうか。わたしここでお休みさせていただいていたんですね」

 ようやく思い出したらしく、自分の金髪の頭にこつんと軽く拳をぶつけてみせた。
 普段、寝起きの姿をさらすことがあるにしても、その相手は気心の知れたあいの女中に限られるのだろう。

「体調は戻った?」
「おかげさまで噓みたいに身体が楽に――」

 そこでフローラは、はっと自分の両肩を抱きしめ、青ざめた顔でウィルを見つめてくる。
 気がつけば帽子や手袋はおろか、エプロンや身体を締め付けるコルセットベルト、長靴下、パニエまでもが脱がされているのだから、びっくりするのも当然だろう。

「リネン類やコルセットはトリスが持って行ったみたいだよ。体調悪いときにあんまり身体を締め付けすぎるのはよくないって言ってたからね」

 ウィルがまるで他人ひとごとのようにのほほんとした口調で言うと、フローラは目に見えてほっとした表情を浮かべた。

「すみません。ご厚意でウィル坊ちゃんの寝室までお借りしておいて、とんだ失礼をば……」

 乙女は金色の眉を八の字に寄せて、しゅんと申し訳なさそうにうつむく。

「大丈夫。気にしていないから。起き抜けだものビックリするよね」
「お察しくださり助かります。わたし結婚までは純潔な身体でいたいものでして、その……」

 ウィルはベッドの縁に腰をかけ、腕を伸ばしてフローラの頭を優しく撫でてやる。

「心配しなくてもフローラは処女バージンのままだよ」
「もうっ。年上の女性をからかって」

 冗談めかして言うウィルに、三歳ほど年上の金髪の女中は拗ねてみせる。
 随分と気安く接しているようにも思うが、フローラは嫌がるそぶりを見せない。身体を締めつけるものがないせいか、警戒心が薄くなっているのかもしれない。

「それにしても、フローラの家庭は随分と厳しかったんだね?」
「そうなんですよ!」

 フローラはよくぞ聞いてくれたとばかりに拳を握る。

「結婚するまでは清い関係でって、親はそればっかり言うんですよ。口づけなんてもってのほかだし、指一本たりとも身体を触られることがあってはならないって……」
「ぶっ!? …………く、口づけとか、ちょっとしたスキンシップくらいなら、い、いいんじゃないのかな?」

 眠れる乙女の唇を吸い、乳房を揉みしだいた少年はいたたまれない気持ちでそう口にする。

「ですよね!? わたしもそう思うんですよ。せっかくこんな大きなお屋敷の客間女中になれたのですもの」

 フローラはうっとりと夢見るような表情を浮かべた。
 トリスの評したとおり、敬虔なる乙女は恋に恋しているようである。

「フローラならきっと素敵な人にめられると思うよ?」

 女中長が懸念しているくらいなのだから間違いないだろう。

「あら、そうですか? ふふ、ありがとうございます。侍女レディースメイドにしていただけるなら、もっと素敵な人に巡り会えるチャンスも増えると思うのですけど?」

 フローラは可愛らしく唇に指を添えて、欠片かけらも期待していない口調でおねだりしてみせた。
 だが、どうやら女主人に仕える侍女になりたいという客間女中の願望は本当のようだ。
 たしかに爵位を持たない下級地主ジェントリの出身のフローラなら礼儀作法にも通じており、伯爵家の侍女を任されていてもおかしくはないだろう。

「でも、この屋敷には女主人も令嬢もいないからねえ」
「存じ上げておりますとも。ウィル坊ちゃんがご結婚されたときに奥方さまにご推薦いただけたらと」

 金髪の客間女中のほうも自分の叩いた軽口にくすくすと華奢な肩を震わせていた。

(フローラは綺麗だよね。よほど美人な奥さんをめとらないと釣り合いが取れないや……)

 横に座る金髪の客間女中と距離が縮まったと感じたとき、

『みすみすだれかにくれてやるのが惜しいのであれば、意識のあるときにフローラの唇を奪う、最初の男性になられるべきです』

 トリスの言葉を思い出していた。
 惜しいに決まっている――
 ウィルはフローラの華奢な肩に腕を回し、こちらにぎゅっと抱き寄せる。

「え? あ、あの……」

 少年がぐぐっと唇を寄せると、金髪の乙女の表情が目に見えてこわばった。

「唇を吸われるときは目を閉じなさい」

 主人の声でそう命令すると、

「は、はいっ!?」

 金髪の女中は条件反射のように金色のまつを伏せたのだ。
 差し出されたままの乙女の唇に、ウィルは自身の唇を重ねる。

(ああ、柔らかい……)

 瑞々しい乙女の唇の粘膜の感触を味わう。
 フローラからは戸惑いと同時に、流されそうになっている気配がありありと伝わってきた。
 ウィルはもう何度目かも覚えていないが――意識のあるフローラにとって今回が初めての口づけである。
 ぎゅっとフローラを抱きしめると、女の鼻から息が漏れて、ウィルの背に女の手が回された。

(フローラが受け入れてくれている! ああ、やっぱり起きてるときは、こうして反応してくれるのは良いもんだなあ!)

 しばらく口づけを楽しんだのち、どちらからともなく身体を離したのであった。
 フローラは指先で唇を押さえている。

「――わ、わたし口づけされました? いまも胸がドキドキしています」

 恋に恋していた金髪の女中は、ぽおっと上目遣いにウィルの顔を見つめてくる。

(こ、これ以上は、ぼくのほうが我慢できなくなっちゃうよ……)

 なにせフローラを抱くには色々と準備が必要なのだ。
 処女証明書の手配もしないといけない。それにせめて生理が終わるまで待つ必要があるだろう。
 断腸の思いで身体を離すと、客間女中は「あっ」と切なげな声をあげた。

「フローラのこと大事に思っているから、これで止めてあげる」

 やり場のない性欲をうやむやにするために、令息は恩着せがましくそう口にする。
 すると、フローラは急に体温が離されて寂しいのか、ウィルの背中にぎゅっと抱きついてきた。

(あれ? フローラって思ってたより簡単だよね?)

 性交を覚えてまもない少年は、年上の乙女をそのように評した。
 情緒たっぷりに押し付けられる、乙女の乳房の感触になんとかあらがいながら、

「……フ、フローラ、病み上がりなんだから、きょ、今日はもう部屋に下がりなさい」

 背中から回されてきた白い手の甲を優しく叩いて、離れるように促した。

「は、はい」

 客間女中は名残惜しそうにウィルから離れ、ベッドから降りた。
 ウィルもベッドから出て、フローラの隣に並ぶ。
 こうして間近に立つと、やはりフローラの方が少しだけ背が高いのだと分かった。
 まだ伸び切らない背を悔しく思いつつ、少年は金髪の流れる女の背中を見下ろした。
 ウエストを締め上げるコルセットベルトや、スカートの尻をふくらませるパニエはトリスに持ち去られており、背中から尻にかけて女の身体のラインがそのまま黒地の服の上に浮き上がっているのが見えた。

「せっかくこんな綺麗な腰つきをしているんだから、腰の後ろに布を詰め込む必要なんてないんじゃない?」

 幼少のころから女中の腰にまとわりついた屋敷の令息は、あのごわごわしたパニエの感触が嫌いであった。
 少年は立ち上がり、目のまえの女中の黒地のスカートに包まれた尻の谷間の起伏を、ゆっくりとなぞり上げると、

「あんっ……ウィル坊っちゃまは、パニエを付けない方がお好みなのですね……」

 まんざらでもない様子で、フローラは身体をくゆらせた。
 トリスが口にしていたとおり、唇を吸った後は尻を触られても、大して気にした様子がない。
 金髪の客間女中を送り出そうとドアノブに触れたとき、ドアの向こう側からノックの音が聞こえてきた。

(わっ!?)

 こちらから扉を開けると、そこには大きな袋を抱えた長身のトリスと、その後ろに小柄なソフィアとマイヤの姿が見えたのだ。

「夜分、失礼します」
(そ、そういや部屋に呼んでいたよね。ど、どうしよう……)

 フローラの唇に夢中になっていて、すっかり時間を忘れていたのだ。
 寝ているときに好き放題身体をまさぐらせてもらった年上の乙女と、これから肌を合わせようとする同世代の少女が鉢合わせになって気まずいものがある。
 しかも――

(え!? ソフィアもマイヤもお化粧してる……ソフィアなんて髪を後ろに巻いているし!)

 ソフィアの方は憮然として、マイヤの方は頬を赤く染めて――身綺麗にした女中が夜分遅く主人の寝室を訪ねる――ひと目見れば意味するところは明白であろう。

「……ご、ご主人さまも女中長も、お気遣いいただき、ありがとうございました。だいぶん体調が良くなりました。わたしはこれにて失礼します。お休みなさいませ」

 幸いなことにフローラは、長身のトリスの背後に控えたソフィアとマイヤに気がつく様子がなく、赤らめた顔をうつむかせたまま部屋からそそくさと退出していったのだ。


   ‡


「よう。スケコマシ。よろしく頼むぜ」

 マイヤは部屋に入って軽口を叩くと、どうにでもしろと言わんばかりにベッドの真ん中に大の字に寝転がった。
 黒い女中のお仕着せのすそが少しだけ捲れ、ペチコートに包まれた白い靴下があらわになる。

「久しぶりにおまえの部屋来たけど、相変わらずデケえベッドだな。おい、髪はほどいたほうがいいか?」

 主人をおまえ呼ばわりする気心知れた赤毛の少女は、片側を三つ編みにして垂らした自身の赤い髪の束をつかみ、そういてきた。

「そのままでいいよ。似合ってるから」
「うし! へへへ。照れるなァ。なんでもおまえの好みに合わせてやるから遠慮せずに言えよ?」
「うん」

 寝転がったマイヤの近くにウィルが腰を落ち着けた。
 トリスに「さあ」っと肩を押されたソフィアが、ウィルの隣にそっと腰を掛ける。
 ソフィアは、銀の三つ編みを王冠のように頭に巻き付けた――クラウン・ブレイドの髪型をしており、いっそこうごうしい感じすらした。
 背後には少し蓮っ葉な空気を漂わせた――それでいて実のところ純情な幼なじみの赤毛の少女が寝そべっていて、隣には神殿娼婦ヘタイラのような気品をもつ少女が座っているのだ。

「ふ、二人ともすごく綺麗だ……」

 少年は思わずといった感じでそうつぶやいていた。

「おお。オレもか。ソフィアと並ぶと見劣りして相手にされないのが心配だったんだ。今日から全部おまえのもんだからな。好きにしていいんだぞ」

 赤毛の少女は起き上がると、あぐらをかいて、バンバンとウィルの背中を叩いてくる。
 一方のソフィアがぷいっと横を向き、うなじを少し赤く染めていた。

「さあ。今夜のメインディッシュは二人ですよ。わたしはお呼びがかかるまで、ここで控えさせていただきます」

 トリスはそう言って、ウィルのまえに置かれた足置き台オットマンの上に優雅に腰を掛けた。
 左右のマイヤとソフィアの肩に手を回す。
 左の赤髪と右の銀髪が同時にぴくりと震える。
 まず左側のマイヤのほうを向き、えいやっとその唇を吸う。
 ぶちゅっと唇と唇どうしが触れあう。
 思えばこれがマイヤとの初せっぷんな気がする。
 記憶のあいまいな幼いときのはノーカウントとして。
 マイヤは伏せられた赤い睫毛を震わせて目を瞑っていた。
 表情をじっくり観察するために、舌を長く伸ばしてマイヤの唇の輪っかをめまわす。
 このあいだもソフィアの右肩にはウィルの右手がかかったままであった。
 唇を離すと短い唾液の橋が架かる。

「えへへ」

 マイヤは夢見心地で微笑み、唇を舌で舐めた。
 次は、三つ編みの王冠クラウン・ブレイドのソフィアの唇を吸い寄せる。
 ソフィアの腔内は、マイヤに比べて熱っぽく滑った感じがした。
 ずっと緊張して唾液を飲み込むのを忘れていたのか、舌を差し入れるとぴちゃぴちゃと音がした。
 そしてソフィアの白い喉が鳴って、男女の混ざり合った唾液を飲み込んだ。
 初めて接吻を交わしたとき、トリスに『唾液は頂きなさいね』と言われたことを覚えていたのかもしれない。
 唇を離すと、ソフィアは肩を上下に揺らしながら、戸惑うようにそっと自らの唇に指を当てた。
 ウィルは、肩から下に手をすべらせて、ふたりの胸をなぞると、左手は柔らかいほのかな膨らみがあり、右手は無乳に近かった。
 ふと、おもわず正面トリスのほうを見つめた。
 そこには二人とは違って、そこにあるだけで存在感を放つ豊満な胸の膨らみがあった。
 トリスは、二人の少女の身体をまさぐるウィルのほうを、じいっと見つめている。
 季節は夏だが、今日は少し肌寒い冷えた夜だった。あそこに挟めば温かいだろうなとウィルは思った。

「おみ足を失礼します」

 トリスはそう呟くと、ウィルの靴を脱がしはじめた。
 それと同時に今度は自身の襟元を緩めると、黒いレースの胸当てとその谷間が顔をのぞかせた。
 すぐに靴下まで脱がされる。

「あッ――!」

 とあげたのはウィルの声である。
 ウィルの足の指が、トリスの唇に包まれたのだ。

(そ、そんなところまで舐めるなんて……)

 足の指を、一本一本、股の間まで舐めていく。

「今度、それ、オレもやってやるよ」

 赤毛の少女の唇がそっとウィルに合わせられる。
 少年によって両の乳首を探り当てられたソフィアは、

「お、おい。そんなに強くつまむなッ!」

 抗議の悲鳴をあげた。
 湿ったウィルの足先が、今度は温かく柔らかい乳房の感覚に包まれる。
 トリスの前の襟のすきに足先が差し込まれていた。
 トリスの大きな乳房は、いまやウィルの足置き台オットマンだった。


「……全員、服を脱いで」

 ウィルの言葉に三人の女が返答を返す。

「喜んで――」
「あいよ」
「わ、分かった」

 赤毛と銀髪の少女二人は胸元のボタンを外すと、もぞもぞと女中服の黒いドレスを首から上に引っ張る。
 女中服も黒いベールが剥がされると、次々に少女たちの肢体を包む白い下着が見えていき、少年の目を楽しませた。
 薄い胸もとを蝶のような刺繍でおおわれた白いレースのスリップをつけていた。肩紐を外すだけでそのまま下に脱がせられそうだった。

「お、オレ、なんか恥ずかしい……。こ、こんな高そうな下着履いているの初めてだし………」

 意外にもしゅうを露わにしたのはマイヤだった。

「似合っているよ」
「ほ、本当か」
「うん」

 男を誘うようにもとに濃いめのアイシャドーをした女の服を剥ぐと、意外に清純な下着をつけていたのでギャップが面白かった。
 ソフィアのほうはそのままのイメージである。脱いでもなんとなく神々しい。じっと見つめると、僅かに顔を右側にそむけ、頰に赤みがさしたので何か安心する。
 全くの無反応なら、王族の着替えを手伝う下男のような気分になったことであろう。

「二人とも後ろを向いて四つんいになって」

 ウィルが命令すると、二人は素直に従った。
 壮観である。
 同世代の少女二人が、自分の言葉に従って犬のように四つんいになって、下着に包まれた尻を少年の目の前に晒しているのである。
 まず二人の突き出した尻を同時に撫でると、びくりと少女たちが震えた。戸惑いが手の平を通じて伝わってくるようである。
 それから、ベッドの二人の間に膝立ちになって、左右から二人の胸を触り比べた。
 ソフィアの胸は、立った姿勢だとほとんど膨らみを感じないが、四つんいになると、揉めないこともないことに気がついた。
 マイヤのほうは、その姿勢だともう結構揉みでがある。

「トリス、ぼくの服を脱がせろ」

 ウィルは、前を向いたまま、後ろのトリスに命令をした。
 そしてその後、思わず振り返って「こういうのって駄目?」と確認を取ってしまう。
 このあたり、まだ少年は年相応であった。

「いいえ。だんだんと女中メイドの使いかたがおじょうになられています。女中を自分の快楽に奉仕させてください。そして女中にとっても、それが当然と感じられるようにおしつけくださいませ」

 要領よく脱がされ、気がついたら、パンツ一枚の格好になっていた。
 少し迷ったすえに、最後の一枚もトリスに脱がさせる。一言も命令することなく、右足を上げ、ついで左足を上げたときに、ウィルは素っ裸で男根を立てていた。
 左手の少女の尻にぼっした男根をすりつける。
 その体勢で、胸の青い芯を潰さないように揉むとマイヤは、甘い吐息を漏らしはじめた。
 そのまま下着のうえに射精してもいいくらい気持ちがいい。

 ソフィアのほうは、胸を触られようが尻を触られようが、なるべく反応を見せまいと銀色の眉をひそめていたが、後ろからウィルのちょうで股間をすりつけられると耐えかねたように身を震わせた。
 四つん這いの体勢のまま、ふたりのレースのスリップを捲り上げ、頭から引き抜く。
 ソフィアは健康的な白い背中をしており、マイヤのほうは色素がないのかと思うくらい真っ白な背中だった。
 脇から覗くと、淡いふくらみの先に乳首が見えた。後ろから指の腹で擦ると、少し固くなって、びくんと背筋ごと反るのが面白い。
 マイヤの背筋を舐め上げると、幼なじみの少女の呼吸は一気に荒くなった。

 ソフィアに同じことをすると、ぷるぷると小刻みに体を震わせた。
 性的な刺激にあまりに不慣れで、どう受け止めてよいか分からないかのようであった。

「毎日、胸をお触りになるのがよろしいでしょう。異性に揉まれると成長が促され、乳房が大きくそして柔らかくなります。女のほうも、大きくしてくださったのはご主人さまだという自覚が生まれましょう」

 ソフィアは、退路をふさがれたのを悟った野性の獣のように瞳を見開いていた。
 一方のマイヤは黒茶色の睫毛を伏せて、それもいいかなというような、まんざらでもない視線でウィルを見つめた。
 四つん這いのマイヤを後ろから覗くとレースの下着の中央は湿っていた。
 ショーツを膝まで下に脱がす。
 マイヤのしょが露わになった。トリスやフローラのように成熟した女性器と違って、チューリップのつぼみのような趣がある。

「あっ」

 ウィルの鼻息がかかったときにマイヤは短い悲鳴をもらした。
 そのあとに蜜がとろみを増したので嬌声かもしれない。
 入り口は三つの穴が空いた複雑な構造をしていた。
 フローラの縦に割れた形とは違って、三つの小さな仕切り紐が真ん中の処女膜に繋がっている。
 そこに舌先をすぼめて、それぞれの区切られた穴の周囲をつるっと舐めると、マイヤはがくがくと膝をふるわせ、ベッドの上につっぷした。
 次いで、ソフィアのお尻の後ろからショーツのひもに手をかけたとき、硬い声が響く。

「ウィル。分かっていると思うが、――わたしの純潔を破ったら、殺すからな」

 お尻を突き出した格好で、女性器を覆う布の下からソフィアがこちらをにらみ上げていた。
 この少女はその気になれば赤子のようにウィルをひねり殺す力を持っている。

「もちろん、分かっているよ」
「おいおい! ウィルを殺すなんて言うなよ。そんなことをしたらオレがおまえを噛み殺すぞ」

 ショーツを膝まで下ろした格好で、四つん這いの尻をウィルに晒したマイヤが、躾の良い番犬のようにソフィアに唸り声を上げた。
 そうすると、ソフィアはひどく困った声で「わたしは他に選択肢がない」と答えた。

「仕方ありませんねえ。そういう約束ですから」

 後ろでトリスがそうためいきをついた。
 もしかすると、トリスはソフィアを見張るために来たのかもしれない。

「ソフィア。仰向けになって、こちらに股を開いた姿勢で、下穿きを下ろして」
「なっ」
「親切で言っているんだ。後ろからだと、本当にぼくが処女膜をやぶらないかどうか監視できないだろ?」

 なおも、ソフィアはちゅうちょしているようだった。
 さきほども十分すぎるほど恥ずかしい格好をしていたが、男に正面から向き合って、自分の股を広げるには抵抗があるらしかった。

「止めようと思うならば、ぼくに処女を奪われるまえでないといけないんだ。処女膜が突き抜かれると、きみは神子としての力を失い、復讐の手段を失うよ」

 トリスの「ああ」という声は溜息に彩られている。
 なぜ馬鹿正直に教えてしまうのかという感情がありありと伝わってきた。

「わ、わかった」

 少年なりの誠実さは伝わったのか、銀狼族の神子は促されるがまま仰向けに横たわった。
 そのまま舌を筆のように伸ばし、白い顎から首へと舐め下ろしていく。
 胸の二つの突起を経由したときに、ソフィアは悩ましげに銀色の眉を寄せる。少女の胸の小さな二つの蕾は、つつましくだがはっきりと尖っていた。
 やがてウィルは、ソフィアの顔をまたぐようにして四つん這いになって、少女の下腹部に鼻先を埋める。

「な、なんだってこんな体勢に……」

 頭上を見上げたソフィアが困惑の声をあげる。
 少女はすぐ目のまえに、びくびくと起立して震えるウィルの亀頭を見ているはずだ。
 ウィルはというと、少女の布地に鼻を当てて、すうっと息を吸い込む。

(澄んだ甘い匂いがする……)

 しゅうによるものなのか「あ、あ……」とソフィアはくぐもった声をあげている。
 下着は白いレースの中央部分が湿っていた。少女の腰の左右に指をあてががい、下着をずり降ろす。
 銀色の柔らかい茂みがウィルの下唇をくすぐった。そこから続く少女の花弁は、あさつゆに濡れるしろの蕾を思わせた。合わせ目がほんのりと桃色に色づいている。
 ウィルの股間の先もなにか柔らかいもの――おそらくはソフィアの頰に当たっており、それが興奮を高めてくれる。
 目の前の誘惑にあらがえなくなり、少女の性器の外側の部分――大陰唇をつうっと舐めたとき、ブチっという音がした。
 振り返った先に見たものは、少女の手に引き絞られ、引き千切られた白いシーツであった。

(怖ッ!)

 手折られた女中が感極まってシーツをつかむのを何度か見ているが、シーツが引き裂かれたのは初めてだ。
 だが、それでも思春期の性欲は止まらない。ソフィアの肢体がもだえするのを胸で受け止めた。
 少女という生き物は、幼女の時代に全身に散らばっていた性感帯が、成熟していくごとに次第に生殖器付近に集まってくるという。
 その少女の土手の左右にそって、土手の合流地点の敏感なにくを舌でつついたその瞬間――

「ぶっ」

 ウィルの呼吸が止まる。ソフィアの白い腹が、ウィルの胸を打ちつけたのだ。

「ご主人さま!!」
(わ、わ……!)

 そして浮遊感。ベッドのてんがいを支える左右の柱が――その間で悲鳴をあげたトリスの顔が見える。
 少女がちょっと腹筋を打ち付けただけで、ウィルの身体全体が浮いたのだ。
 そして落下する。
 ソフィアの肢体がクッションとなって受け止め、

「ぶっ」

 ソフィアの鼻先にはウィルのたまぶくろがのしかかった。

(い、いま、すっごく跳ねた……)

 横合いから伸びたトリスの手のひらが、ウィルの背中を撫でる。背骨が折れていないか、確認しているようだ。
 すぐに頭上で、ほっとした溜息がこぼれた。
 胸で受けていたからいいものの、頭に食らっていたら首の骨でも折っていたかもしれない。本気で洒落しゃれになっていなかった。
 まるで北海のオヒョウ漁師にでもなった気分である。
 人の背丈より大きなヒラメの化け物のような魚――オヒョウのヒレ打ちは、直撃すると容易に人の内臓を破裂させるという。
 少女の細い身体からこのような剛力が発揮されることを、改めて不思議に思う。

「すまない。自分を制御できなかった……」

 声音には恥じ入るような感情が込められていた。

「ぼくも気を付けるから、ちゃんと次はこらえてね」

 こんな危険な目にあった令息の返事がそれである。

(うーん、上から抱きついたのは失敗だったか。ソフィアも不安だろうし、いざというときに逃げられないもの)

 少年は止まらない。
 呆れるような視線を背中に感じつつも、少女の膝の間に身体を割り込ませ、

「舌で舐めるよ」

 少女の両の足首をつかみ、左右に開く。
 この体勢ならば、なにをされているかソフィアもよく見えるはずだ。

「う……」

 よほど恥ずかしいのかソフィアは息を詰まらせている。
 ウィルが、蕾の合わせ目のあたりを舐め上げると、

「う……あっあ……」

 少女は、びくびくと開いた股を震わせる。
 さらに舌をすべらせていく。起伏の小さなうねを乗り越えると、なだらかな湿地帯に侵入した。
 沼のようにぬかるんだ窄まりを指先で左右に捲りあげると、その中央に小指の先が入るか入らないかくらいの小さな穴が空いているのが見えた。

(こ、これがソフィアの処女膜か!?)

 銀狼族の純潔の象徴が濡れそぼり、少年の眼前に晒されているのであった。
 フローラやマイヤのように、横切るような仕切りがついている形とは違っていて、真円であった。リサ・サリの形に近いだろうか。
 穴は周囲の肉に引っ張られて、わずかにひくひくと湿っていた。そこには血管の通った筋も見える。

「ひゃ!」

 舌先で舐めてみたが、どこまでが膣口でどこからが処女膜なのか分かりにくい。
 いかにも少女の粘膜という感じで、瑞々しい微かなしょっぱさを感じたが、小便の味とはまた違う。以前トリスに教えてもらったとおり尿道は少し上にあり、そこから雫が漏れている気配はない。
 しばらく円の縁をなぞるように注意深く舐めていると、すっとソフィアの身体から力が抜けて一気に緊張した。
 さっきのがまた来るかと、ウィルはあわてて頭を起こす。
 あんな調子で腰を跳ね上げられたら、今度こそ首の骨が折れてしまいかねない。そんなざまな死に方は御免である。ホッと安心しかけたところで、

「貴様ァアア!?」

 突然、銀狼族の神子が地を這うような叫び声をあげる。

(な、なに!? どうしたの……?)
「よくも約束を破ったな!!」

 ソフィアは起き上がると、裸のまま膝立ちになり、ふうふうと肩で呼吸をしながら真正面からウィルを睨みつけたのだ。




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