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第八話「女中長の夜伽」

 トリスは、ベッドの上であおけになり、左右に広げた膝を抱えて、股ぐらをウィルのまえにさらしていた。
 身につけているのは豊かな胸もと包む白いブラだけである。
 一度は美にささげた身体からだだけあって、トリスの白いウエストからつま先に至るまで、本当に筋肉のつき方に無駄がない。
 しょくだいの炎に照らされて、トリスの裸の下半身が白く照らされていた。
 一方のウィルも裸である。ベッドの隅には、トリスの手によって畳まれたウィルの服が見える。

「んん――ご主人さま、あとほんの少し奥まで指を伸ばせませんか?」

 いま、ウィルの右手の中指はすっぽりと指の付け根までトリスの体温に包まれていた。しかし、指先に届くものはない。

「う、うん。目一杯差し込んでいるつもりなんだけど」

 ウィルはおそるおそるそう言った。
 女性のデリケートな部分なので、あまり無茶はしたくない。
 ウィルは、なにがほんの少しかも分からずにトリスの指示に従っていた。
 蝋燭の炎が揺れるたびに、ベッドで脚を開く女と、その股ぐらに顔をのぞき込む少年の、大きな影が部屋の壁に揺らめいていた。

「女を抱くときに、ぜひご主人様にやっていただきたいことがございます」

 トリスはそう言った。

「……え、な、なに?」

 ウィルが、ひとまず指をぬるりと引き抜くと、トリスは黒いりゅうを悩ましげに寄せた。
 少年の濡れた指先はゆらめく光に照らされてぬめっと光っている。

(す、すごい)

 女のなかにかっていた指がほかほかと湯気を上げていた。
 トリスはベッドに脱いだ女中服のポケットから、なにやら親指くらいの大きさのブロック状の茶色い塊を取り出すと、

「こちらを――」

 それを、長く白い指先でそのままウィルの唇の奥へと押しこんだ。
 ウィルはげんな表情をしたが、トリスの差し出されたものを、警戒感なく、もぐもぐと条件反射のように噛んでしまう。
 女中長ハウスキーパーの仕事には、お茶菓子を提供することも含まれている。トリスの出すお菓子は料理人コックも顔負けなくらい本格的なものが多く、口に含めば何でも美味しい物だという意識が染みついていた。
 だが、ウィルは首を傾げた。
 初めて口にする、なんとも形容しがたい、ぐにゃぐにゃとした触感である。

「あに? ほれ」

 そのブロック状のものは蜂蜜の味がした。
 貴族家の女中長には、お菓子や医薬品作りをするための、専用の蒸留室スティルルームが割り当てられていることが多い。そこでの仕事を手伝う蒸留室スティルルーム女中メイドまでいるのだから、この分野の専門家スペシャリストといってもいい。
 蜂蜜には、少しだけ薬臭い風味が混ざっている。これはお菓子ではなく、薬の一種なのだろうか。

(まあ、トリスの出す薬なら、そんなに変なことにはならない――かな……?)
「少し噛んでいてください」

 ウィルは、言われたとおり素直に口の中のものをもぐもぐと噛みほぐす。
 四角いブロックは角張った固さがほぐれ、噛むほどに唾液を吸って柔らかくなる。

(甘くて結構おいしいかも。だけど――)

 やがてウィルは困惑顔になった。かみ切れないスジ肉のように口の中にいつまでも残るのだ。
 トリスは、ウィルが口の中のものを持てあました頃合いに、

「はい。吐き出してください」

 そう言って、白い手をお椀のように差し出した。
 淑女レディの手を汚してよいものかとちゅうちょしたが、結局ウィルは吐き出した。
 トリスの指には、唾液で汚れた茶色い塊のようなものが載っていた。

(結局、なにこれ――?)

 ますます、それが何なのかよく分からなかった。

「これは、アカシアの樹液と蜂蜜を混ぜて固めたものです」

 そう言うと、トリスは、ウィルの唾液で濡れた茶色い塊を、指先でくにくにと形を整え、小さな皿のような形に潰してしまった。

「それで、これはなに?」
「避妊のための道具です――」
「あ、避妊……!」

 トリスの用意したものは、生殖を阻害するガム状の避妊具ペッサリーであった。
 うっとウィルを喉を詰まらせる。さきほどトリスが触らせようとしていたのが彼女の子宮口だということに、ようやく思い至った。

(……ぼくみたいな子どもでも、射精したら妊娠するんだよね……ぼくが目の前のトリスを妊娠させる……)

 ウィルは、快楽をむさぼるだけで、避妊について欠片も考えていなかったことを恥じ入ると同時に、どう受け止めていいか分からないぼうぜんとしたものを感じた。

「アカシアの樹液には古くから避妊効果があることが知られています。調べたなかでは、これが一番人体に害がないようでした」
「避妊はしたほうがいいよね」
「はい。必ず避妊はしてください。女中の妊娠は頭の痛い問題ですから」

 そう言って、トリスは茶色い軟体の避妊具を自らの女陰へとあてがう。

「ご主人さま、やり方を覚えていただきたいのです。なかに入れるのを手伝ってもらえませんか?」
「……う、うん。そのまま指で押せばいいんだね」

 ウィルは、トリスのまじまじと見つめる視線を意識しながら、茶色い軟体に爪を食い込ませる。
 にゅうっと指を限界まで差し入れると、こつっと一度奥に何かが当たった感触がしたあと、指先の感触が消失した。

「後はわたしが押し込みます」
「わ、わかった」

 指を抜くと、少し開いた穴はすぐにくちゅりとすぼめられ、ちつこうから半透明の粘液がひとすじこぼれ落ちた。
 指を抜くときに軽く眉を寄せるトリスに、

「……ト、トリスは、僕の子を身籠るのは嫌だと思うのかな?」

 そうたずねた。どうしても気になってかざるをえなかったのである。
 俯いている――というより股ぐらを覗き込んでいるので表情は読めなかった。
 トリスはそうにゅうする指を一瞬静めた後、

「女中とは、主人によって使役される存在です。もし女中が主人の子を身籠もれば、わたしも扱いに困ります。はらんだ女中は、主人と使用人との中間のような存在となって、屋敷の秩序に良い影響を与えないでしょう」

 トリスはあくまで女中長としての立場からしか発言をしなかった。

「う、うん。分かったよ」

 ウィルは深く追求しなかった。それを少し寂しく感じはしたが、トリスに限らずまだ女を妊娠させる覚悟なんてなかった。

「これを正しく装着すれば、屋敷の女のはらに精を放っても、妊娠させずに済みます。いまのうちに使いかたを覚えてください」

 トリスの与える教育というものは、微に入り細をうがち、質が高い。耳を傾けておいて損はないだろう。
 ウィルは首を縦に振った。
 トリスは自らのちつない深くまで、その長い指を二本差し込み、眉を少し悩ましげにゆがめながら、ぐっぐっと掻き回した。

「膣内に入れておくだけでもそれなりに効果はありますが、こうやって貼り付けておくと、まず妊娠はしないでしょう」

 いまは、ウィルの唾液でほぐされたガム状のペッサリーが、トリスの子宮の入り口をぴったりとおおっているのだ。
 女の身体が後ろに倒れると、乳房がたぷんと揺れ、重力で水平方向に潰れた。

「さあ、どうぞ。準備は万端です」

 トリスがウィルに向かって両手を広げる。
 ウィルは誘われるままに、トリスの膝を割り、白く重量感のある乳房に顔を埋めた。
 トリスの両腕が少年の頭に回され、後頭部にトリスの顎がこつんと当たった。

「夜は長いのですから、したいことを満足するまでなさってください」

 トリスはそう優しく言った。
 さっそくウィルが、トリスの乳房の先端に顔を寄せる。
 何年ぶりの邂逅であろう――
 ふと見上げると、トリスのほうもやや困惑した表情をしていた。
 乳母ナニーであるか女であるか決めかねているのかもしれない。
 トリスのつんと突き立った乳首がウィルの唾液で汚れる。
 ここをくわえたのはもう記憶もない赤ん坊のころ以来だ。
 強く吸ってみると、トリスはくすぐったそうに眉を寄せた。
 だが、ここから母乳が出ることはなかった。

「おっぱい出ないんだね」
「もう何年も、断乳してましたから」

 ウィルは母乳を出させようとしつように吸ってみた。
 手のひらで女の白い乳房を揉み、ふたつの先端の乳首を交互に吸っていく。

「出たら、大変ですよ」
「どうして?」

 存分に白い胸の谷間で鼻筋を揺らし、ウィルがそう訊ねた。

「ご主人様を赤ん坊扱いしているということですから。それをお望みですか?」

 ウィルはぴたりと乳首を吸うのを止めた。
 そして、ずりずりとトリスの身体の上をい上がる。
 ぐにぐにとトリスの両胸を揉みながら、トリスの唇をついばんだ。
 赤ん坊のようにトリスの乳首を吸わないのであれば、この乳房の新たな利用方法を考えないといけない。
 食のためではなく、性のために使わなければならないのだ。

「トリス。ぼくのを挟んでくれるかな」

 ウィルは二つの白い巨峰のうえにびくびくと小刻みに震える男性器を差し出した。

「はい。喜んで……」

 女は、自分の乳房を両側からわしづかみにして、ウィルの剛直を挟みこんだ。
 両の腕の動きによって、二つの白い丘がゆるやかに前後左右、平行に、あるいは交差して、ウィルの男性器を磨き上げる。

「う。ううっ!」

 どんどんとウィルの性感が高まっていく。
 ウィルは無意識にトリスの乳房のなかにトンネルを掘るようにして、前後に腰を往復させた。
 少年の背筋にだんだんと震えるような刺激が立ち上ってくる。
 このまま白い山の頂を汚してしまうのもよいかもしれない。
 だが、それよりも――

「も、もうれたい!」

 ウィルは辛抱たまらないようにそう叫んだ。

「はい。どうぞ」

 とろけるようにほほむと、トリスは太ももを左右に広げた。
 それは素晴らしい光景であった。
 自分の挿入を待ちわびて、女は股ぐらを開いているのである。
 女に対する支配欲が男根とともにぐっと持ち上がってくるのを感じる。
 ウィルは、トリスの自分よりも大柄な太ももに手を置き、ちゅぷっと先端を膣口に当てた。
 ぬるぬるした粘膜どうしが口づけをするように軽く触れた。トリスの膣の入り口が、軽くウィルのものを啄んだ気がする。押すと、とうが半分ほどがトリスの桃色の肉に包まれる。
 柔らかく厚い肉をかきわけるように、ずぶずぶとウィルの性器が沈んでいく。
 男根が中くらいまで進んだ辺りで、

「トリス。もう、おまえはぼくのものだ!」

 精一杯肥大化した自我がそう叫ばせた。
 それを聞いてトリスは赤い唇をぱっくりとり上げ、歓喜の笑みを浮かべた。
 そこから腰を押し出すと、抵抗があるというよりもぬるりと前に促されている感覚がある。物理的にそうなのか快楽がそうさせているのかは分からない。

「唯一無二のご主人として、生涯おつかえいたします!」

 あらかじめそう答えると決めていたのだろう。
 トリスは一語一句はっきりと口にした。
 「おっおおっ」とウィルの口から思わず唸り声が発せられる。
 それと同時に両手をおいたトリスの太もももけいれんするように震えていた。
 根元まで押し込むと、やがて二人の下半身のいんもうが触れあった。
 顔のまえで、トリスの指がウィルのどこか一番安定した場所を探しているかのようにわなわなと震え近づいた。
 ウィルがその手を掴もうとすると、それより早く背中から押された。
 白く長い足が関節柔らかく曲がり身体に絡みつき、両のふくらはぎがウィルの背を押したのである。

「わ、わわ!」

 激しくぶつかったかと思いきや、ぽよんとその衝撃は柔らかい肉のクッションで吸収される。
 少年と女の体格差だと、女の膣内に男性器を埋めながら、巨乳が顔を枕のように支える体勢になるのだ。
 さきほどのトリスの、『女は夜具のようなものとお考えください』という言葉を思い出していた。

「すいません。我慢できずに粗相をしてしまいました」

 女は雌蟷螂めすかまきりのような、ねっとりとした視線でそう言った。
 腕だけでなく、足のつま先まで神経が通っているようにウィルの腰や背をやさしくあいをする。
 ふくらはぎや太ももがお互いの汗で温かくすべる。
 頭がでられる。
 ウィルは顔の横にある乳首に吸い付いた。
 いまは泉の源泉は枯れてしまっているが、この乳を飲んで育ったのだ。
 これは何という感覚だろう。
 ――大地とまぐわる全能感。ウィルの感じているものがまさにそれであった。
 大地の恵みを吸い、大地の芯に男根を突き立てているような不思議な感覚に囚われる。考えてみれば、実の母親の顔を知らないウィルにとって、トリスとは自分を育んでくれた大地のようなものだ。

(ぼくはいま、この大地を犯している)

 そのまま大地に向けて腰を打ちつけていった。
 そうすると大地が波のように振動し、喜びの地響きをあげはじめる。ニュルッ、ニュルッといままで自分が聞いたことのない肉の摩擦音が部屋に響く。
 乳房の谷間から、トリスの顔をうかがうと、唇のあいだから天井に向かって舌を突き出していた。
 その表情を見たときだけで、思わず射精しそうになった。
 ウィルは小さなお尻をぷるぷると震わせてなんとか快楽の波をやり過ごした。

「あら、我慢なさらずお出しになればよろしいのに。わたしはもうご主人さまのものなのだから、好きなときに好きなだけお使いになればいいのですわ」

 トリスはそう言って、やや横からウィルの頭を抱きかかえると、耳の穴に舌を差し込んだ。
 トリスからの思わぬ攻めに、びくんとウィルの背筋が震えた。
 なんとかその、神経に直接さわられるような刺激に耐え、

「ぼ、ぼくもトリスを感じさせたいんだ」

 そう言うと、直後、女は身体を波打たせ、ウィルは達しそうになった。

「んん。きつっ!」
「ふふ。ごめんあそばせ。わたしはどうも言葉責めに弱いようでして」

 トリスは、不用意にきゅっとウィルのものを締め付けたことを詫びた。

「ご主人さま。いまは、わたしのことなどお気になさらないでください。わたしの弱いところ感じさせる手順など、あとで全てお話ししますから」

 ウィルは自分の快楽を極めるために、激しく腰を打ちつけていく。

「あっ、あっ、ああん」

 トリスもごく自然に嬌声を上げはじめた。
 ストロークを長くしていき、くっちゃくっちゃという水音がより激しくなる。ウィルの顎先からしたたり落ちる汗が、トリスの跳ねる乳房のうえに落ちる。
 零した汗がトリスの肌に浸透していく。
 達する気配を察してか、ウィルを包む内股がきゅっと締め付けられた。
 ウィルが太ももを両手で押さえると、トリスのふとももの長内転筋が手のひらに浮き上がるのを感じた直後、猛烈に膣内が締め上げられた。
 下腹から何かどろどろしたものが上がってくる。
 限界まで突き込み、まもなく来る絶頂の予感を感じる。
 ――次の瞬間、強烈な快楽の奔流がウィルの身体を貫いた。
 どくんという精液を放出する音が部屋に響いているのではないかとすら思った。もの凄い勢いで精液を女のたいないに放出している。
 命が脈打っているかのように、ウィルの男根はどくんどくんと長い射精を続けていた。
 射精が収まりはじめたころに、トリスのほうも、ぶるると身を震わせていた。
 トリスの柔らかい肉布団の上に倒れ込むと、ウィルの意識はだるさに包まれた。
   ‡
 ウィルは、男性器をねっとりと舐め上げられる感触で、意識を取り戻した――
 ウィルはいつのまにか仰向けになっている。
 トリスのほうは、こちらに白く綺麗なお尻を向けて髪をかきあげながら、その下腹部の柔らかくなった肉の棒を口に含んでいる。
 次に先端だけ啄むと、尿道に残ったものを、ちゅぱちゅぱと音を立てて吸っていた。

「尿道にのこった精液は吸い出したほうが良いとされています。今後は女中をそのようにおしつけください」

 上から男性器を口に含むと当然のことながら、唾液はいんけいの根元に流れ落ちていく。
 トリスは、じゅるじゅると派手な音を立てて唾液を回収し、ときおり喉を鳴らした。

(ぼ、ぼくのものに付着した唾液を飲みこんでいるんだ)

 若い男根は、次第に勢いを取り戻しはじめていた。
 トリスはウィルの男性器を右手で柔らかく包んだ。ぺろっと赤い舌を伸ばし、亀頭の周辺をそよがせる。舌の先まで神経の行き届いたトリスの舌遣いのあまりの見事さにウィルは感動する。
 ウィルの視線からは、トリスのお尻が白いカーブを描いているのが見える。さきほど、この女のなかに精を解き放ったのだ。
 女の膣内に射精をすると、支配欲が大きく満たされることに少年は気がついた。
 更衣室でウィルのものを口に含んでくれたときは、口内で射精には至らなかった。

「――ね、ねえ。トリスの思いっきり凄い舌技を見せてくれない」

 ウィルは、それがどれだけ迂闊な一言だったかをすぐに知ることになる。

「よろしいですとも!」

 トリスは、ウィルの股間にうつぶせに顔をしなだれかからせた姿勢から、膝を少し立てる。手慣れた手つきで左手の指を二本己のしょに差し挿れると、背を反らしてウィルの男性器に口を近づけた。

「ん? なに、その体勢?」

 さきほど浴室で潰れた蛙のようにウィルのまえで跪いていたのとは違う。
 なんとなく、自分よりもずっと身体の大きいネコ科の肉食動物が背を反らして顎門あぎとを開いている姿を連想した。

「ご主人さまは、ご自分が楽しむことだけに集中なさってください。わたしは存分に楽しませていただいておりますので」

 蝋燭の炎に照らされたハート型の尻がゆらゆらと左右に動く。
 猫だけでなく虎などの大型動物もこうやって、獲物をねらう前に尻をふるという。

「もし、わたしの身体を触りたければご自由になさってください。わたしは身体が柔らかいのでどのような要求にでも応えます。胸なり尻なり、揉むなり吸うなり噛むなりたたくなり、ご随意に」

  そして、女は感慨深そうに溜息をついた。

「ここまで本当に長かった……。積もり積もったとしの情念でご奉仕させていただきます」

 ――その直後、快楽神経を直接刺激されたかのような感覚が背筋を駆け上った。
 女の口内は、まるでさきほど放った膣内のようにうごめいている。膣内ほど複雑ではないものの、女の舌がウィルの弱いところを探して執拗に攻めかけてくるのだ。
 おまけに口内は、行き止まりとなるべきところを、さらに先に進んだ。

(ふ、深い――!)

 まるで底なし沼のように喉奥に吸い込まれた。狭く細いやわにくの進んではいけない領域にまで進入した気がする。
 そしてペニスを目一杯奥まで滑らせると、トリスの下唇がたまぶくろに触れた。通った鼻筋はウィルの陰毛のなかに埋まった。
 トリスは長い黒髪を前後へと激しく振り乱すと、頬を凹ませて激しい音をたてる。
 ――そこからのトリスは一切容赦をしなかった。
 もう瞬殺に次ぐ瞬殺である。
 ウィルは二度ほど続けて逝かされた。
 もう覚えているのはそこまでである。ウィルはゼンマイが切れたかのように意識を失った。
   ‡
 翌朝、ウィルとトリスは連れだって、屋敷の見回りをしていた。

「や! おはよう!」

 女中メイドたちにそう声をかける。
 昨晩、あれほどこってり絞り取られたというのにウィルの声は明るかった。
 若い快復力もさることながら、はじめて女を経験して自信がついたというのもあるだろう。
 足元の深紅色のじゅうたんをよく見ると、生地がところどころ薄くなっている。
 階上のお古の絨毯が、ここ――階下のお下がりとして使われているためだ。
 一般に、貴族のお屋敷では二階より上が主人たちの暮らす空間――階上の世界アッパーステアーズであり、一階とそれより下の地下空間が使用人たちの暮らす空間――階下の世界ビロウステアーズと言われる。
 屋根裏部屋などに使用人が寝起きすることはあっても、基本的には、階上が主人たちの空間、階下が使用人たちが仕事と生活をする空間という意識が形成されている。
 女中が何気なく天井を見上げるとき、それは仕える主人に対して意識が向けられていることが多い。

「みなさん、おはようございます」

 ウィルに続いて、トリスが優しい声で挨拶をする。
 階下の世界は掃除も行き届いている。
 厳格な管理が、人々が快適に働ける心地よい空間を生む。この屋敷ではトリスの哲学が体現されていた。
 ここには階上の世界のような堅苦しさがない。
 階上の世界ほどピカピカにはしていないが、それでもウィルは、下級の使用人が生活をする階下の世界が大好きであった。
 屋敷の主人筋が覗く必要もないのであるが、いまでもこうして冷やかしにくる。

「坊ちゃん。おはようございます。女中長も……」

 白いシーツの山を抱えて、うれしそうにそう返事をしかけた洗濯ランドリー女中メイドの口が止まった。

「ああ、忙し。重い。忙し。朝は忙し――」

 そう言って、その横を急ぎ足で石炭の入った鉄のバケツをもった家政ハウス女中メイドが通り抜けようとして、

「おはよ。あ、坊ちゃんも、おはようございます! ……っ? トリスさま?」

 びくっと振り返った。
 ほかの女中たちもちらちらとトリスのほうを見ていた。

「……ねえ、いつにもまして女中長のお肌つるつるじゃなかった?」
「それになんだか上機嫌みたい!」

 屋敷の女中たちが噂話をしていた。

「……トリス、なんだかみんな噂しているよ」
「あら、まあ。女中なのですから噂話くらいいたします」

 ウィルは横を半歩遅れて優雅に歩くトリスのほうを振り返った。
 いつも直線的に引き締められているくちもとに、微妙なカーブが描かれている。しっくいのように白いトリスの肌に黒髪がよく映える。
 いままで、人を拒絶する雰囲気があったが、いま、その肌に親しみやすい血の温かみが通っているように感じられた。
 そして――軽く肉感的に歪められた下唇には昨夜の余熱が残っている。
 廊下を曲がり、トリスが先に進むと、揺れるトリスのぷりっとなめらかな尻が見える。バレエをやっていただけあって、歩き方が綺麗であった。
 ウィルは、きょろきょろと周りに女中のいなくなったときを見計らい、片手で形のよいお尻を撫で上げてみた。
 トリスは表情一つ変えずに黙って、ウィルの愛撫を受け入れる。
 かつてウィルのたけがトリスの腰ほどしかなかったころ、この尻は頬を寄せる場所であった。
 いまは触りかたも以前とは違って、尻の肉たぶの合間を指でなぞるようになっている。
 ウィルは、昨晩この割れ目の奥に射精したかと思うと、胸がどきどきとした。

「あら」

 ふいにトリスは立ち止まり、白いエプロンで包まれたおへその下あたりを、指の長い手のひらでさすった。

「昨日、いただいたものが下りてまいりました」

 そう呟いたのだった。
 トリスの唇が少年の耳に寄せられた。

「いっぱいお出しいただきましたから、わたしの下着はもうご主人さまのものでべとべとですよ。ちなみに今日は黒です――ご主人様が、黒はわたしのイメージとおっしゃってくださいましたから」

 目の前に女中長の黒いショーツのクロッチには、昨晩ウィルが放った精液が絡みついている。
 それを想像すると、ウィルの股間はより強く主張しはじめた。
 ウィルのズボンの布地が少し盛り上がるが、ウィルはそれを隠そうとはしなかった。昨日までなら、みっともなく腰を引きながら歩いていたことだろう。
 目の前の女とは昨夜さんざんなぶった――嬲られた関係にある。

「まあ、ご主人様。ご立派になられて。ふふ。でも次はほかの女を試してみませんか?」

 女中長はそうささやきかけてきたのだ。


◇ 屋敷の女性一覧 ◇
女中長   1人 (トリス◎)
蒸留室女中 2人
洗濯女中  6人
料理人   1人
調理女中  4人
皿洗い女中 2人
酪農女中  3人
客間女中  1人
家政女中 12人
雑役女中  8人
側付き女中 1人 (ソフィア△)
    計41人
お手つき  1人 (済み◎、途中△)




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