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第七話「女中長の性教育」

 こんな遅い時間帯に女性レディを部屋に引き入れたのは、もちろんこれが初めてである。
 左手にはてんがいつきの白いベッドが見える。そこは女中メイドの手により完璧にベッドメイクされていた。純白のシーツがぴんと張られており、準備万端であった。
 仕切り直したこともあり振り返ると、本当に今日起きたことが現実だったのかと、信じられない気持ちである。

 ウィルにとって今日は激動の一日であった。人生の転機といっても間違いない。
 そんな今日を締めくくるのに相応ふさわしい出来事がこれから起こるのである。
 いまさらだが、じゅうたんを踏みしめる脚が震えてしまいそうだった。

 目の前には、自分よりも頭一つ分くらい背の高い女性――トリスの、黒い布地を押し上げる大きな胸の膨らみが見える。
 顔をあげると、トリスの陶器のような白い鼻筋にかすかな官能の朱が混じっていた。ほんの僅かな違いのはずなのに、顔全体の印象が変わって見える。
 さきほどウィルが乱暴に掴んだ後ろ髪は、再び頭の後ろできっちりと束ねられていた。
 服装もいつもの女中服である。

「わざわざ、ごめんね――」

 緊張をすように、足元を見つめたままウィルはそう言った。

「いいえ――」

 トリスが首を振ると、乳児期のウィルを育んでくれたその大きな胸の膨らみが、いまも液体がまっているかのように、たぷんと震えた。

「むしろうれしかったです。それはもう」

 トリスは、はにかんだ笑みを浮かべた。
 どのような格好で部屋を訪ねたらよいかとたずねるトリスに、いつもの女中服のままがいいとウィルは答えたのだ。
 目の前のトリスはというと、自制するように自身の両肘を押さえながら、ぞくぞくと身体を震わせていた。

(ぼくは、いまから、これからこのひとを抱く……!)

 ウィルは、正面のトリスをしっかりとえる。
 鼻から荒い息を吐きながら、一歩まえに踏み出して、ぎこちなく女のほうに両手を差し出した。
 そうすると、待ちきれないとばかりに、ぐんとその腕が引かれた。

(あ……)

 大きな乳房に顔をうずめる体勢となった。
 女の長い手が少年に絡みつく。立ったまま、少年の身体に長い脚をかけ、ふとももやふくらはぎで身体の裏側を優しくでてきた。ウィルの股の間には、反対側のふとももが押し当てられている。どうやっているか分からないくらい、成熟したやわにくみくちゃにされていた。

(や、やわらかい。で、でも。身動きが……)

 女中長ハウスキーパーは女郎蜘蛛のように、ウィルにまとわりつき耳元で、

「ご主人さまはらすのがおじょうです」

 そうささやきかけてきた。
 そのときついでに軽く少年の耳がしっとりと唇でついばまれた。女の熱い吐息が少年の首筋を直撃する。
 顔を埋めた胸の谷間からは、風呂上がり特有の磨いたやわはだの匂いがした。

「……ぼくにも触らせて」

 胸に顔を埋めながら、ウィルがやや息苦しそうに言うと、

「はい」

 トリスはあっさりと拘束をほどいた。

 ウィルは、雄大な曲線を描く柔肉に手を伸ばし、指の腹で下乳の重みを慎重に確かめながら、ゆっくりと外周をなぞる。

「そのまま立ってて」

 ウィルはそう言って、従順にうなずくトリスの背後にまわる。
 かなりの身長差がある。つま先立ちになって、ようやく女のうなじに唇が届くくらいだ。
 女の背後から両脇に腕を差し入れ、両手で乳房のふくらみをすくい上げる。重量感のある柔らかい肉のかたまりを、ぐにぐにとこねて感触をたしかめた。

(す、すごい……!)

 極上の女の肉体を自由にしている感じがたまらなく良い。
 視線を下げると、ウィルの腰より高い位置にある大きなでんが、黒いしゃのスカート生地を柔らかく押し上げているのが見える。
 左手で乳房を揉みながら、右の手で女の尻を撫で下ろしてみた。尻の谷間を指先で念入りになぞっていく。
 身体を触るたびに、女のやわごしにぶら下がっているかぎたばがじゃらんと音を立てる。
 ウィルにとって何気ないこの音は、屋敷の女中たちが耳にすれば反射的に背筋を伸ばさざるを得ない音である。

「いつかトリスが女中に指示を出している後ろから、こうやってお尻を撫でてみたいな」

 女中たちの見ているまえで女中長の尻をなになく触ったら、女中たちはどれほど驚くであろうか。

「ふふ。それはよろしいですね。ご主人さまがそうなさる日を楽しみにしておりますわ」

 女が心底楽しみだと言わんばかりに陶然とほほんだので、いまさら冗談だとは言い出せない雰囲気になった。
 見上げていると無性にその赤い唇を吸いたくなったが、つま先立ちになってもまだ届かない。トリスの方からウィルに合わせてもらう必要があるだろう。

「ト、トリス、ベッドに腰を掛けて」
「はい」

 女は従順にベッドの縁に座り、じっと少年を見上げる。
 ねっとりとした赤い唇がわずかに開いていた。

(ええい。いっちゃえ……!)

 少年の背がかがめられ、未成熟の唇が、成熟した女の赤い唇の上にかぶせられる。
 合わさった瞬間、トリスの顎がやわらかく上を向いて震えた。
 ウィルが口腔に舌を差し入れると、トリスはさりげなくそれに応じた。
 お互いにチロチロ舌先をくすぐり合うと、なんだかに興が乗ってくるのを感じた。

「あとでもっと凄いキスを教えてね」
「はい。いくらでも」

 唾液で唇をらしながら、トリスはうっとりと返事をした。
 トリスが本気を出したら凄そうだ。

「ねえ、トリス。女性のあそこがどうなってるか見せてくれない?」

 ウィルの要求はひたすら直線的であった。
 夜も更けてきたおりである。
 ふいに、わずかに開いた窓から吹き込んだ夜風が、天蓋のすきまへと吹き抜け、ウィルの顔を冷やした。
 ぱちぱちと少年はまたたきをした後、「あれ、急すぎかな。ごめん」と、その性急さに思い至りびる。
 するとトリスは女と教育係の中間の顔で微笑み、唇の端をめた。

「いいえ。自分でご主人さまに性の手ほどきを申し出たのですから、いかなる要望にもお応えするのがわたしの使命です」

 トリスはスカートを脱ぎ落とすと、白いガーターベルトに白いストッキングで包まれた脚があらわになった。
 なんとなく、トリスの下着のイメージは黒だと勝手にウィルは思っていたので意外だった。
 ウィルの視線に含まれる色合いに気がついたのか、

「今日は、なんだかむすめのような気分でしたので」

 手の甲を鼻の先にあてて、くすくすとトリスは笑った。

「うん。とても似合っている。トリスは黒のイメージだけど白も新鮮でいい」

 思わずといった感じで、そうぽつりと呟くと、「女泣かせになりますわ」そうトリスはうるんだ瞳でウィルを見上げた。

「今後は女中の下着の色もご主人さまがご指定ください」
「え? は?」

 しかも、トリスは「わたしの」と言わずに「女中の」と言った。

「スカートをめくったときに、好みと違う下着だと興ざめでしょう?」
「……い。いいのかな……そこまで干渉してしまって。ごくっ」

 露骨に女中のスカートをめくる自分の姿をイメージしてしまった。
 幼い頃、女中のスカートをめくるのはお気に入りの遊びだった。といっても、女中の腰にも背が満たないころの話である。女中のスカートは絶好の隠れ場所なのだ。女中たちもくすくす笑いながら、自分からスカートのなかへと誘導してくれたものだ。
 刺繍の入った長靴下の巻かれた二本のれいな足、それがウィルの心象風景である。
 だが、幼い時分にスカートをめくるのと、いまそれをやるのでは意味合いが全然違うだろう。

「部屋のカーテンや壁紙を変えるのと同じですよ」

 トリスはそうあっさりと言ったのだ。
 ウィルは奴隷市場で、家具でも選ぶかのように奴隷達を買っている上流階級に嫌悪感を感じたものだが、扱い方が丁寧なだけで、マルク家でもやっていることは実はあまり変わりがないのである。いや、奴隷として買ったわけでもない女中たちまで家具のように扱っている分、なお始末が悪いかもしれない。

「女中のほうも、高価な下着をつけられると喜びますよ。むしろご干渉なさってください。それにお仕着せだけでなく、直接肌に接する下着にまで主人の意思が反映されていると、女中の意識も違ってきますから」
(な、なんの意識が違ってくるのだろう……)

 女中長ハウスキーパーの思考は、怖いくらいに主人のより良き屋敷の支配ハウスキープを手助けすることで一貫していた。骨の随までの女中長である。
 ウィルは、いまトリスの思想の偏りよりも、ベッドの縁に腰をかけて薄明かりで見える目の前の白いデルタ地帯のほうが気になっていた。
 ゆっくりと足を左右に開くと、レースの刺繍の縁取りがある白いショーツが露わになった。

「ご主人さま、お手数ですが、しょくだいに火をつけていただけませんか。ちょうどご主人さまの右手のそばにありますので。しっかり明るい場所でご覧いただいたほうがよろしいと思います」
「あ、うん」

 ウィルは燐寸マッチを擦って、棚の上に置かれた蝋燭に火をともすと、トリスの影がゆらゆらと扇情的にカーテンに映し出された。
 蝋燭の火に、白いレース編みの中央部がゆらゆらと照らされている。そこは湿って色違いになっていた。蝋燭の火で見ると、なぜか匂いをいっそう強く実感してしまう。

「女中たちは、服装はお仕着せですから、下着だけはお洒落をすることが多いんですよ」

 トリスは濡らしたショーツを見せつけるように開いたまま、そう説明した。

「さあ、どうぞ……」

 トリスはそう言ったが、ウィルはここで困った。
 次にどうすればいいのか、さっぱり分からないのである。

「えっとね――こういう場合に、次にどうするとかってマナーはあるの?」
「あら。ご主人さまが望むとおりになさればいいのです。触っても舐めても、匂いを嗅ぐのも自由です。わたしの身体で思う存分、女を抱く練習をなさいませ」
「……た、たとえば、……こ、こんなところの匂いを嗅いでもいいのかな?」

 ウィルは恥ずかしそうに、そこを指さし、そう質問した。
 育ちの良さも相まって、ウィルは、女の股間に顔を埋めるという行為に抵抗を感じてしまうのだ。

「わたしの可愛かわいいご主人さま。愛とは――そして性欲とは原始的なものですよ。参考になるか分かりませんが、わたしのたいさらしましょう」

 トリスは、床に落としたスカートに手を伸ばし、ポケットから白い綿の布きれを引き抜いた。
 それはさきほどウィルの射精を受け止めて汚した下着であった。

(な、なんで持ってきてるの!?)
「わたしはいやらしい女にございます」

 そう言って、なまめかしく白く長い脚がMの字になるよう、その踵をベッドの縁に上げると、濡れて透き通るショーツがいっそう見やすい姿勢となった。
 トリスは、そのまま背を後ろに倒して、白濁で汚れた下着を鼻筋に当てて、すうっと息を吸い込んだのだ。
 その姿はウィルに衝撃をもたらした。

「ご主人さまの汗と精液の臭いがします」

 今度は、ぺろぺろと下着に舌を伸ばして舐め始めた。

(な、舐めてる!?)

 トリスとは、ウィルにとって母親代わりの乳母ナニーであり、知識の多くを授けた女教師である。
 その女がウィルの精液を舐めて鼻息を荒くしているのだ。

「射精まで長かったためでしょうか。前回せいされたときにいただいたものより、ずっとお味が濃厚です」

 トリスの白いレースの下着の中央はじゅわあっと目に見えて濡れている。

「男女がお互いの生殖器に舌をわせるくらいごく自然なことですよ。教会はなるべく快楽のない性行為を推奨していますが、厳密に守っている人なんてほとんどいないでしょう」

 それはウィルも薄々感じていたことである。

「人の自然な営みを否定する教会の教えなど、もうお忘れください。あれは一夫一妻制を前提としている平民のあしかせであって、貴族であるご主人さまに相応しい考え方ではありません」

 トリスは教会関係者が聞いたら宗教裁判にかけられそうなことを平気で言った。

「ふふ。こんなものは世間ではしょせん睦言ピロートークと呼ばれます。睦言だからこそ本音と本音でぶつかり合えるのです。ご主人さまにおきましては、女の本音を引き出し、自らの本音で女を従えてください」

 トリスは熱い吐息といきを吐きながら、女中長の顔で微笑んだ。

「ご主人さまはこれからソフィアを自分好みの女に調教なさるのでしょう。女のあそこくらい嬉々として舐めなくて、どうして女を自分の思いどおりにできるとお思いですか?」
「……トリスの言うとおりかもしれない」

 トリスは必ず、ウィルが納得する理屈を引っ張り出してくる。
 ソフィアを自分の好みの女に変えてしまいたいという欲望がウィルの背中を押した。

「さあ、どうぞ。女は感じると膣が濡れます。どうぞ触ってみてください」

 ウィルがぐにぐにと濡れた下着の中央をなぞると、急に「あん」という嬌声を上げたのでびっくりした。

「ふふ。気持ちがよければ声も出ます。お嫌いであれば声を出すのを我慢しますが……」
(あのトリスが自分の指先一つで感じているんだ……)

 ウィルの背筋がぞくぞくと震えた。

「聞きたいから、我慢しないで」
「はい……あんっ」

 ウィルはしばらく布の上から、ぐじぐじと股間を攻め、トリスはいんな感情のこもった声を上げ続けた。指先には粘着質な液体がこびりつき、嗅ぐとちょっと腋の下のような汗の臭いがした。

(へえ、女性のあそこってこんな臭いがするんだ)

 臭いには臭いが、どちらかというと、チーズのように慣れると癖になりそうな臭いである。

「お尻をあげて」
「はい」

 ウィルは、ぐしゃぐしゃに湿ったトリスのショーツを引き抜いた。
 そうすると、ほかほか湯気をあげるトリスのあそこが露わになった。

「す、すごい……。女性のあそこはこういう形をしていたんだ……」
「ご主人さま、ご説明します――ここがぼっした男性器が入るところです」

 トリスはそう言って、敏感なその部分に指先を差し込んだ。くちゃりと音を立てて、指の第二関節までが沈む。抜いたときに、指はてらてらと蝋燭の明かりで光っていた。

「もうご主人さま専用ですよ――」

 その言葉に、ごくりと唾を飲み込んだ。

「この上の小さな穴が尿道にょうどうで、女性がお小水しょうすいをするところです」

 ウィルの目に、わずかな肉の凹みのようなものが見えた。

「ここからおしっこが出るの?」
「はい。女のおしょうすいも意外に勢いよく出るのですよ。ご主人さまのように――」
(う……)

 この女性は自分のおしめを替えていたのだ。改めてそれを意識させられた。

「――見たいのですか?」
「実は、ちょっと……」

 後ろめたさで小声になる。

「今度、浴室でお命じください。さすがにご主人さまの寝室を汚したくはありません」

 トリスはくすくすと笑った。

(そりゃそうか……)

 残念なような安心したような、そんな気分である。

「さらにその上が――」

 その声に促されて、ウィルは女のいんにかぶりつくように顔を近づける。
 ちつこうは、少年の鼻が触れるか触れないかの距離にあり、なにか別の生き物のようにあやしくうごめいている。

 トリスの指がその上の突起で止まったとき、眉頭が上がり、指が震えた。ウィルの鼻先にあるそこは、とても敏感そうだった。

「ここが陰核クリトリスで、女性が特に感じる場所です」
「へえ。ここをいじればトリスを泣かせられるんだ」
「はい。泣かせてください」

 ウィルが、少年らしいちゅうちょのなさで、そこに舌を伸ばし、女芯を舐め上げると、

「あん!」

 トリスは、黒地のブラウスに包まれた大きな乳房を揺らしながら、上体を大きく後ろにらせた。
 すると、白い尻肉の谷間がよく見えてきた。すぼまりがウィルの眼前に晒される。

「ちなみに一番下が不浄の穴――肛門アヌスです」

 女中長はおのれの恥部をすべて晒したまま、嬉しそうに言葉を紡ぎ出す。

「え、えっと、ここだね」

 ウィルは親指で尻肉を左右に広げてじっくりと観察する。

「ああっ。ご主人さまがわたしの汚らしい穴をご覧になっています……」

 トリスがそうつぶやくと、ふとももが少し痙攣し、前の穴がきゅっと収縮する。
 膣口から透明な液体が流れ出て、尻の窄まりを濡らした。

「ちなみにお尻の穴も、男性器を受け入れる穴として使うことができますよ」
「え、ここを?」
「はい。ですが、上級向けですから、まずは女陰ヴァギナに慣れてからにしたほうがよいかと」
「う、うん……わ、分かった」

 ウィルはそう言って、女の膣口の周りをくちゅくちゅと指先でなぞりあげると、

「つっ!」

 トリスは悩ましく眉を寄せながら、白いふとももをぷるっと震わせた。

「ソフィアはそこに処女膜が張っていますから、もし約束を守られるのであれば、うっかり突き破らないように気をつけてください」

 まるで約束を破るのが前提であるかのような口ぶりだった。

「暗くて見づらいんだけど、処女膜ってどのあたりにあるものなの?」

 ウィルがそう訊くと、トリスは、股間を舐める猫のように柔らかく身体を折り曲げて、自身のちつの入り口を指で左右に開いてみせた。

「身体柔らかいね」
「ご存じのとおり、バレエをやっていたので柔らかいんです」

 何度かトリスがそう言っていた覚えがある。トリスがいつもしている髪型――頭の後ろできつく結われたシニヨンは、黒いお団子のようで、どこかバレエダンサーの面影がある。

「あ。ご主人さま。明かりをこちらに近づけますか?」

 ウィルは溶けた蝋が零れないように気をつけながら、燭台を近づけていった。

つうの女はいま口を開いている膣の入り口の何割かが処女膜でおおわれています」

 トリスは膣の入り口に小指を差し込み、そこで円を描いた。

「全部閉じているわけではないんだ」
「はい。完全に閉じていると、生理のときに血を吐き出せなくなりますので」

 そこにウィルは生命の神秘のようなものを感じて、「なるほど」と何度もうなずいた。

「あと、処女膜の形は女の子によって個人差が激しいと思います」
「トリスはどんな形をしていたの?」

 そう訊ねると、トリスは少し首をかしげ、ウィルが焦る。
 あまりにひどい質問だと気がついたのだ。

「――あ、さすがに答えられなければ」
「あ、いえ。思い出そうとしたのですが覚えてないんです。わたしはバレエの訓練をしているうちに、気がついたら破けてまして」
「へえ……」
「身体を極端に曲げるような激しい運動だと破けることもあるようです」
(そういうものなのか)

 ウィルは不思議な話を聞いた気がした。

「ええ、おかげでわたしの初体験の相手はバレエの教師だったのですが、の血がなくて大層疑われました。バレエ教師のくせに……」

 思いもかけずトリスの男性経験を聞くことになった。

「――トリス。もし嫌だったらそこまで話をしなくてもいいんだよ」

 ウィルはいまさらだがそう言った。
 トリスの口調に僅かな険を感じたのだ。

「お優しい。これからはご主人さまを唯一の男性と定めてお仕えするのですから、むしろ、ご主人さまさえ不快でなければ聞いてほしいのです」

 ウィルはトリスの湯気の立つ股間を拝むようにして神妙に頷いた。

「ありがとうございます。わたしが話をしている間、ご主人さまはお好きになさっててください。女中のしがない昔話にすぎませんから――」

 トリスの言葉に甘えて、さっそくウィルは女陰のなかに舌をすぼめると、トリスの両の足先の震えが、ウィルの手に伝わった。

「ん。当時のわたしはシャルロッテ女学院の生徒で、バレエに身をささげていました。んん」

 シャルロッテ女学院は、女性が通える最高峰の教育機関として名高い。
 マルク家もかなり出資をしているという。詳しく聞いたことはないが、その縁もあってトリスがマルク家に来たそうである。
 舌先の動きに応じて、ときおり女の紡ぐ言葉がゆらぐ。

「これでも、ちょっとしたものだったのですよ。わたしはバレエ史に自分の名前が残ることを露とも疑ってませんでした。ライバルが仕込むトゥーシューズの画鋲もなんのその。翌日にはわたしと同じ目に合わせましたが――わたしはシューズを血染めにしてでも踊って見せましたわ。少女時分は、ごうまんにも自分が芸術の神ミューズに選ばれていると信じていましたから」

 右側の足をぴんと上に伸ばして見せた。座った姿勢にも関わらず、爪の先までぴんと神経が通っているように見える。
 女陰の縁から股の付け根から白い太ももにむけて、くっきりと筋肉の筋――恥骨筋が浮かび上がる。
 たったそれだけなのに、

(綺麗だ……)

 ウィルはそう思った。
 機能美というか、抜き身の迫力のある美しさであった。足先まで自分の意のままにするためには激しい訓練が必要だろう。
 視線を戻すと、トリスが脚を開いたため女陰の形が変わっている。

(ここが、ぼくのものを入れる穴なのか)

 思わず唾液を飲み込んだ。ウィルの心を読んだかのように、

「ご主人さま。指を入れてみてください」

 トリスはそう言った。

「あ、うん」

 おそるおそる人差し指を桃色の肉壁の中に差し入れる。ぬめった肉壁が指に絡みつくが、吸い込まれるように中へと消えていく。

「ん!」

 トリスの顎が反れ、白い喉と顎の裏が見えた。そのまま指の第三関節のぎりぎりのところまで押し込んいく。

「失礼します」

 トリスはそう言ったあと、白い太ももの内側の筋と腹筋がくんと張ったかと思うと、ウィルのそうにゅうしている指を、ぬめった肉壁がきゅっと締め上げた。

(こんなところに僕のものを入れたら、どうなってしまうのだろう――)

 ウィルは、ソフィアの股間に男性器を押しつけているだけで達してしまったのである。
 ごくりと唾を飲み込んだ。

「鍛えると、女のあそこはかなり自由になります」

 トリスの白い頰は少し紅潮し、息を荒くしたまま、首まわりに白いレースの刺繍の入った黒いスチュワートブラウスを脱ぎ始めた。
 細かい刺繍の入った布地で包まれた大きな胸が露わになる。身体つきがきゃしゃで乳房だけが大きいので、その存在感に毎度びっくりする。

「わたしはその後もバレエを続けていたのですが、必死の食事制限にも関わらず、身長が高くなるのが止まらず――」

 トリスはけんしわを寄せながら、自分の乳房を両手で掴んだ。

「なによりもこの胸です。この胸が邪魔だったんです」
「え、駄目なの?」
「駄目なんです! バレリーナにとって乳房が揺れるほどみっともないことはありません。相方のバレリーノとの共演でも、持ち上げられるリフト動作のときに胸が上下に揺れて、はしたないと言われます。おまけに重いと暴言まで吐かれました。だいたい、わたしは骨も細いし身体も重いほうではないんですよ。分かりますか!?」

 トリスはつらつらと一気にまくし立てる。

「わ、分かる。た、たぶん――」

 なんとかウィルがそう答えると、トリスは、はっと我に返り、気まずそうに顔を少し赤らめた。
 そして恥じ入るように、こほんとせきばらいをする。

「とにかくバレエの道を諦めざるをえなくなったわたしは、荒れに荒れ、バレエの教師と関係を持ち、妊娠してしまいました」

 いま、まさにウィルが指を入れている穴から子どもが生まれてきたのだ。生々しすぎる話であった。

「そのバレエ教師とは?」

 ウィルはつい聞いてしまった。聞かずにはいられなかったのだ。トリスがかすかに眉間に皺を寄せた。

「あの男は、国王陛下のきょうを買い、殺されました。わざわざ陛下のまえで陛下をあざけるようなえんもくを踊ったのです」
「――ごめん。悪いことを聞いちゃった」

 しゅんと暗い雰囲気になり、思わずちつないから抜こうとするウィルの手を、トリスは押さえた。

「いえ、全く――全然」

 事もなげにトリスはそう言い放つ。

「いえ、全然、まったく。殺されて当然の男でしたから。あの男のことなど愛してないので問題ありません」

 トリスはそう言い捨てて、顔を左右に振る。胸当てに包まれた大きな乳房も揺れた。

「そ、そう……」

 そこから先は生半可な覚悟では踏みこめない。そう予感した。

「あのような男のことなどどうでもよいのですが、娘を失ったことはとても残念です。だからこそ、ご主人さまにお仕えすることができたのですが――」

 女は寂しげに瞳を伏せる。
 娘と死に別れたトリスには乳をさずける赤子がおらず、母親と死に別れた赤子のウィルには乳を授けてくれる女が必要であった。

「生きていたら、ぼくやロゼと一緒に遊べたのにね……」

 ウィルがそう言うと、トリスはハッと淡褐色ヘーゼルの瞳を見開いた。
 ロゼというのはトリスの年の離れた妹のことで、父親の伯爵からかえりみられず家族がほしいと願うウィルのために、この屋敷に連れて来られた経緯がある。
 黒髪を頭の左右で結わえたロゼが、その名前の由来ともなったロゼワインのように綺麗な薄桃色の瞳でウィルを見つめ、ウィルのことをお兄さまと呼んで慕ってくれたのだ。
 ロゼがウィルの女中長を目指すようになり、トリスの後をなぞるように遠く離れたシャルロッテ女学院に入学して、もう三年くらいは顔を合わせていない。

(あと半年くらいでロゼも卒業だよね。早くロゼに会いたいなあ……)

 ウィルが感慨に耽っていると、トリスがじいっとウィルの顔を見つめていることに気がついた。

「ご主人さまがあの子に目をかけていただけることを、姉として大変光栄に思いますわ……」

 少しだけ潤んだ目元を長い指でこすった。

「さあ、気合いを入れてご奉仕させていただきますわ」

 ぎゅっと握った両手の間で、大きな乳房がぶるっと震えた。

◇ 用語解説 ◇
優秀な女性を輩出することで有名な女性教育機関。女性の社会進出が進んでいないこともあって、女中養成所のような位置づけになっている。見た目も選考基準に含まれているようで容姿の優れた女性が多い。首席生徒は女王蜂と呼ばれ、ほかの女生徒に対し専制的に振る舞うことが許される。男子禁制であるためか同性愛に走りがちな学風だとか。女中長ハウスキーパートリスはここの首席卒業生。トリスの妹のロゼおよび洗濯ランドリー女中メイドイグチナの娘ヴェラナがここで寮生活を送っている。

◇ 登場人物 ◇
ロゼ
マイヤと並ぶウィルの幼なじみの一人。血の繫がった肉親の愛情を知らないウィルのために幼少期に屋敷に連れてこられた。トリスの歳の離れた妹――ということになっている。かつての屋敷の使用人たちを巻き込んだ、おままごとのような血の繫がらない兄妹関係はウィルにとってもかけがえのない思い出である。いまもウィルのことを「お兄さま」と呼ぶ。現在は屋敷から遠く離れた女学院で寮生活を送っており卒業間近。



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