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第十一話「女中の使い方」

 いま、ウィルの目の前のベッドには、睡眠薬を盛られたフローラが寝息を立てていた。
 横に立つトリスがぴらっと掛け布団をめくり上げると、そこには黒いお仕着せと白いエプロンに包まれたフローラのたいあらわになった。
 細かいフリルのついた白い女中帽ヘッドドレスの横から伸びる金色の巻き毛が、童話のヒロインのように愛らしい。
 伯爵家の客間パーラー女中メイドを努めるだけあって、容姿が整っている。
 顔だけでなくスタイルも良い。手足は華奢である。腰は細い。胸は適度に――トリスとは比べるべくもないが、そこそこ大きい。
 女の肢体は無防備にさらけ出されている。
 ウィルは思わずごくりと唾を飲み込んだ。
 ふいにウィルの右手のひらが、トリスの手によって重ねられ、フローラのほうへと誘われた。

(え?)

 そして、あまりにも自然な成り行きのように、あおけのフローラの左胸のうえに重ねられたのだ。
 フローラのエプロンの白い山脈のしわの形が変わる。

(や、柔らかい)

 手の平のなかにはふくよかな丘があった。量感はたっぷりである。
 ソフィアのように未熟なわけでもなく、トリスのように極端に大きなわけでもない、普通の――というには豊かな乳房に触れたことに興奮していた。
 手のひらに沿うようにぴったりフィットするのだ。山のすべてを掌握できている感じがする。
 エプロンごしになだらかな肉の丘の上を右手の指先がう。
 ぐにぐにと山の形が変わる。
 トリスの手はもう重ねられていなかった。

「い、いいのかな。こんなことをしても?」

 ウィルは今さらのように言う。少年の手は横たわる女の胸に吸いついたように離れない。

「ええ。もちろん。ご主人さまが抱く女の品定めするのは当然ですから」
「で、でも」

 ウィルは戸惑いで眉をひそめた。
 なんといっても相手は寝ているのだ。

「な、なら。これも当然だよね」

 ウィルは少しかがんだ姿勢のトリスに空いた手を伸ばし、エプロンのすきから、たぷんと大きな乳房を持ち上げた。
 黒いブラウスの布越しに、下着のラインと柔らかい乳房の感触を覚える。

「ええ。ご主人さまが揉み比べるのは当然です」

 トリスはむしろ触りやすいように自分から胸を差し出していた。
 トリスの乳房は完全に手の平から零れる、一方のフローラの乳房は手の下でぷるぷると弾んでいた。
 柔らかい肉のかたまりを、じっくり比べるように、にぎにぎと揉みしだく。
 どちらも完全に成熟した女のやわにくで、青い芯のようなものは欠片も感じさせなかった。

「女の乳房を値踏みしたいのであれば脱がして確かめればいいんです」

 トリスの言葉に、奴隷市場で少女の淡い乳房を後ろから揉みしだく奴隷商人の姿を思い出した。

「愛であれ性欲であれ欲得であれ権力であれ、女中を屈服させさえすれば問題ありません。ええ。触るのに邪魔ですね。外してしまいましょう」

 トリスは、客間女中の背中に手を回し、エプロンの後ろの、白いリボンのような締め紐を解いた。
 エプロンを抜き取ると、黒いワンピースの布地の上に女性の身体の起伏が浮かび上がってみえた。

「ちなみに、このマルク家のお仕着せの色には意味があるそうです。黒色には誠実さと勤勉さを、白色には貞淑さの意味合いが込められてるようですよ」

 いかにも父親のマルク伯爵のやりそうなこだわりではあった。
 マルク家の女中服は何種類かある。
 ワンピースの黒いドレスのものと、白か黒のブラウスに黒いスカートの組み合わせのどちらかがメインに使われている。いずれにしても黒と白が基調である。
 いま、トリスは腕を下ろし、貞淑さを表現するワンポイントの白い襟元を緩めた。
 すると、フローラの顔が和らいだ気がする。

(お、女が女の服を脱がせるって、なんか凄くいやらしい……)

 ウィルはトリスの長い指先をじっと見つめていた。

「さあ、どうぞ」

 その声に後押しされて、ウィルはフローラの黒地を押し上げる膨らみを両手で大胆に揉みはじめた。
 ちらっとトリスのほうをうかがうと、フローラの左手のレースの手袋を外していた。
 それが終わると反対の手袋を外し、今度は足元にまわって脚をすっぽり包む長く白い靴下を脱がせはじめた。
 フローラはトリスの盛ったみんざいのせいか、身じろぎひとつしなかった。
 くちもとを近づけると、桃色の唇の谷間から、静かな甘い寝息がウィルの鼻先をくすぐった。
 唇には色の薄い口紅リップが塗られている。
 ややちゅうちょしたが、誘惑に耐えきれず、ウィルはそのまま唇を吸ってしまった。

(ああ、唇も柔らかい)

 ぴちゃぴちゃとフローラのなめらかな唇の表面を舌でなぞる。背徳感でぞくぞくした。
 さらに腔内に、ぬめりと舌を差し入れる。
 だが、そこで――

「ご主人さま、頭の女中帽を外してあげてください」

 トリスがウィルの行為をさえぎるように言った。

(女中帽なんて、トリスが外してくれればいいのに)

 ウィルはいま、乙女の乳房を両手で思う存分揉みながら、本格的に腔内をじゅうりんしようとしているところだったのだ。

 だが、トリスの口調には、ほんの少し試すような響きが混ざっていることに気がついた。
 ウィルは言われるがままに、金髪の頭部を彩る、白いレースの縁飾りについた女中帽を外してやった。

「さきほどの、フローラはせっぷんははじめてですよ」
(う、うう)

 フローラはけいけんな教会の信徒なので薄々察してはいたが、改めて言われると責められるようでつらい。
 自分のような少年が成熟した若い女性の初接吻を奪ってしまったのだ。覚えてないにしろ。

「あとは、コルセットとスカートの下のパニエを脱がせます」
「……たしかにこのままだと寝苦しいよね」
「ええ。脱ぐのと脱がさないのとでは疲労の回復が段違いですから」

 トリスがフローラのお腹のあたりを軽く手の甲で叩くと、コルセットの皮のこんこんという硬い音がした。
 フローラのウエスト周りはぎゅっと締まっている。
 ショーツの上に着けたパニエがスカートのシルエットに丸みを与えていた。
 来客を取り次いだりきゅうしたりと、屋敷の対外的な窓口となる仕事なので、服装に気をつかっているのだろう。

(これだけスタイル良ければ、パニエでお尻が膨らます必要ないんだけどなあ……)

 両手にはフローラの乳房の感触が残っている。
 そのいんを意識しながら、ウィルは一つの疑問を抱いた。

(なんでトリスはぼくにフローラの胸を触らせたんだろう。けしかけるように女中に手を出すことを勧めながら、一方で引き留めている)
「トリスはきっとこう言いたいんじゃないかな。つまり――」

 トリスの肩が少し震えた気がする。
 一つの推測を口に出してみることにした。

「女中は正しく扱えと――」

 ウィルがそう言った瞬間、トリスは目をはっと見開いた。

「え、ええ――」

 女中長ハウスキーパーまたたきを繰り返す。

「一から説明して」
「――ご主人さまは、本当にお賢い」

 その声には紛れもなく感嘆の響きがあった。

「しかし……」

 そこでトリスはしゅんじゅんしているように見える。
 淡褐色ヘーゼルの目にうれいの色を浮かべながら、ウィルの頭の上に視線を移している。

(む!)

 その瞬間、少年は心のうちに激しい憤りを抱いた。
 ウィルは自分が値踏みされたのだと悟ったからだ。
 トリスは迷った挙げ句、ウィルの背の高さにウィルの成熟の根拠を求めた。
 ウィルは、知りうる限りで最も聡明なはずの女性が、そんな自分にも見透かされるような人並みな行動をとったことに腹を立てた。

「トリス。君はぼくの女になることを誓ったのだろう。だったらこの期に及んでぼくを試そうとしないでよ」

 ウィルはそう言って、トリスの淡褐色の目をじっと見据える。
 やがて、屋敷を掌握する女性の目を見据えることは、思っていたよりもずっと精神力を必要とするということに気がついた。
 ウィルはぐっと歯を剥いた。
 そうすると、次第にトリスの目の光彩に屈服する優しい色が混じりはじめた。

「わかりました。ご主人さまのおっしゃるとおりです」

 トリスがそう言ったので、ほっと胸を撫で下ろす。
 へたり込みたいくらいだった。
 やがてトリスは、

「ご説明しますので、こちらをご覧ください」

 と言うと、いきなりフローラの黒いスカートを上に捲り上げた。
 そうすると、靴下の外された青白いふくらはぎと、ひらひらと何重にも重なってスカートを押し上げる白いパニエが現われた。
 腹部には細いウエストをさらにキツく締めあげる黒いコルセットベルトが見えた。

「無理にコルセットなんかつけてウエストを絞る必要なんてないのに」

 ウィルがそう言うと、トリスは女中の健康についてなにか思うところがあるのか、深くうなずいた。
 ガチャガチャとコルセットベルトの金属の留め具を外し、引き抜く。そうするとフローラの呼吸はかなり柔らかくなったような気がする。
 トリスはさらに、腰骨の張り出しを左右から手で掴んでひらひらした布の塊のようなパニエを引き抜いた。そうすると、見えるのは白いガーターベルトと、まぶしいほど白いふとももと、そしてレースの刺繍の入ったショーツである。ショーツのクロッチの部分の隙間には、こんもりと、なにか当て布のようなものが挟まっていることに気がついた。

(あれは……?)
「余計なお世話なのですが、替えてあげましょう」

 そう言って、トリスはためらうことなく客間女中のショーツを膝子僧のあたりにまで、ずり下げてしまった。

(――――!)

 女性器をおおうようにして張られた布の中央が赤黒く染まっている。布全体もどこか黄ばんでいる。

「女の生理用品です」

 それをトリスは無慈悲にもぴろっと捲ってみせた。

(あ……!)

 すると、充血した女性の性器が露わになる。そこはまさに内臓という感じがした。
 一番外側のあぜまでもが血にぬかるんでいた。
  金色の茂みの下が、沼地にかる草のように血で濡れている。
 ウィルの勃起していた股間はえていく。血だらけの女性のあそこに入れたいという気持ちは沸き起こらなかった。

そうにゅうはお控えください。生理中の女の花弁を使うのは少々不衛生です。血だらけになりますし。まあ、フローラは処女ですから、どのみち血は出るのですが――」

 女の側の負担を一切口にしないのがトリスらしい。
 いけないとは思いつつ、怖いもの見たさで、つい観察してしまう。
 たしか昨晩トリスは、ちつこうの入り口に処女膜が張っていると言っていた。

「ここですね」

 ウィルの心理を読んだかのように、トリスはフローラの女性器の左右に指を当て、横に広げてみせると、膣の入り口を縦にふさぐよう、鍾乳洞の柱のような仕切りがついていて、そこにも血が絡まっていた。
 トリスは、ポケットから取り出したガーゼで血の汚れを丹念に拭き取ると、フローラの下腹部は綺麗になり、繊細な形がさらによく見えるようになった。細い仕切りは桃色の粘膜で、表面には細かい血管が走っているのが見えた。

(あ……)

 萎えていたのも束の間であった。
 ひと繋ぎの黒い女中服のドレスが胸の膨らみが見えるあたりにまで捲り上げられ、そこから覗く肌の白さが眩しいくらいだった。
 みずみずしい左右の白い太もも。
 白いショーツの中央はほんの少しだけ朱がかかっている。不潔感はない。
 膝頭に橋のようにかかっていた。
 トリスがわざわざフローラの膝の間隔を広げると、より一層、観察しやすくなった。
 こんな体勢にも関わらずフローラの全身は緩んで、さきほどよりも穏やかな寝息を立てているように見えた。

「いいですか。ご主人さま。わたしを含め、マルクの屋敷に仕えるこれらの女使用人はすべてご主人さまの道具です――」

 そう言ってトリスは、「これら」の一つである――フローラの股ぐらを指差した。

「屋敷の環境を整える女の手はご主人さまの道具ですし、知識や芸術、あるいは悪巧みといったものを産み出す女の小賢しい頭脳もすべてご主人さまの道具です。存分にお使いください」

 トリスの指先が、フローラの手と、頭につつっと軽く触れた。

「身体の外側の部分――唇や乳房、尻、股や腿など、これらすべてご主人さま道具です。存分にお使いください」

 上から順に触れていって、フローラの乳首のあたりにトリスの指先がつんと食い込んだとき、フローラがわずかに身じろぎをした。

「そして身体の内側の部分――口内やちつない、むろん直腸も含めてもよいでしょう、これらすべてご主人さまの道具です――」

 トリスはくっと太腿の付け根のあたりの肉を左右に引っ張ってみせた。

「存分にお使いください」

 締めつけていたものを外され、身体がかんしているせいか、何の抵抗もなく、くぱっと発達したいんの合わせ目が開かれた。

「ですが」

 そこから急に声が硬くなる。
 トリスは今度は、生理で苦しんでいた女の下腹の辺りを右手で示した。

「屋敷の女の子宮だけは存分にはお使いいただけません――」

 まな板の上の鯉のような状態にも関わらず、フローラはふかふかのベッドの上で、ほほみを浮かべるように本当に気持ち良さそうに寝ていた。トリスの薬が効いているのかもしれない。

「妊娠した女使用人は、女であるということと、使用人であるということが分離して、両立させるのが難しくなります」
「つまり絶対に妊娠させるなということだね」

 トリスは重々しく頷いた。

「望まぬ妊娠をして、それをご主人さまがお認めにならずに――堕胎させれば、どんなに忠実な女中であろうとも心は離れていきます。お認めになる――あるいは許可なく出産すれば、以前のような主人と女使用人の関係には戻れなくなります」

 トリスの言に口を挟む余地はなかった。
 だが、ウィルにとって、以前の関係に戻れなくなっても後悔はないと、そう思わせるような女中がいることも確かなのである。
 たとえば――

(おっと。いけない。いけない。いまそれを言い出したら、話がややこしくなる)

 ウィルは、この敏い女に気取られないよう、きゅうっと口のなかを噛みしめた。
 女の味を知ったウィルはもう素直なだけの子供ではなかった。
 上下しょうか、一日百戦す――
 支配者と被支配者のあいだがらで、たとえ肌を重ねるほど親しくても心のなかでは常にせめぎあっている、権力が絡めばそういうものなのだ。

「わたしは、駄目な主人に何度も堕胎させられて、それでも共依存するかのようについていく、あるいは不幸のどん底のまま他に行き場のない――そういう女中を何人も見てまいりました。わたしの生まれ育った下級貴族家の話でありますが――女中長として女中をそういう境遇に落とすつもりもありません」

 トリスは断固としてそう言い切った。

「分かった。この件に関して、トリスの考え方を尊重する」

 ウィルは同意を示した。
 だが、同時にトリスの考えかたは女性をもの凄く突き放したドライな思想が根底にあることをウィルは理解していた。

「つまり、女中の使いかたさえ知っていれば、ろうがどうしようがそれは主人の自由。言いたいのは、そういうことだよね?」
「過不足ない、完璧な定義にございます」

 マルク家の女中長は、スカートの左右を摘んで膝を折るしゃくを、完璧なしょで行なってみせた。
 ふと、ひっかかりを覚えた。

「え、待って! ちょっと確認したいのだけど……」

 ウィルは手の平を額にあてて、うーんと考える姿勢をとった。

「まず、ぼくがここでいきなり発情して、トリスを押し倒すのは主人の自由?」
「一分の問題もありません。ご主人さまの寝室ですし。避妊はわたしの自己責任で行ないます」

 そう即答した。いきなり発情したらもなにも、すでにウィルはフローラの裸の下半身を見てすっかり発情しているのであるが。

「フローラについては、たとえ避妊ができていたとしても、その後のケアを一切考えずに及ぶのはナシと」
「ご名答にございます。さすがはご主人さま。女中という道具を使うにあたって、物理的な側面以外に、精神的な側面を考慮しなければなりません」
「じゃ、じゃあ! ぼくが後のケアを覚悟をして、フローラを犯すのはアリ?」

 そこではたと、トリスが彫像のように固まった。

「いまここで挿入なさいますか? かなり面倒にございますよ」

 トリスは、関節に油を差し忘れたゼンマイ人形のように、ぎいっとフローラの股間のほうへ首を回転させた。

「たとえばの話!」
「避妊準備をなさらずに、主人さまがフローラの膣内に射精をなさったとしたら――その後、わたしはどうするとお思いになられますか?」
「さ、さあ? ど、どうするんだろう」

 昨晩、初体験を済ませたばかりのウィルには想像もつかない。

「フローラのと生理の血で汚れた膣口に唇をつけて、ご主人さまのお出しになった精液を吸い出します。こう、じゅるじゅると。時間をおいて膣内に精子が馴染まないほうが良いので、なるべくフローラの下腹を動かさないよう、すぐに処置をします」

 それは、なにかの一線を超越した話であった。
 使用人便所の生理用品の詰まったゴミ箱の吐きそうな臭気を思い出し、視界に映るフローラの割れ目をレバーのように生臭く感じてしまう。
 あそこの汚れに口をつけるなど、とても考えられない。

「ほ、本当に?」
「わたしはご主人さまの精液を喜んで飲む変態にございますが、生理中の女の花弁を味わう趣味はございません」

 トリスは、この女にしては意外なことにやや憮然として答えた。
 べつに生理中の女の花弁を好むと疑ったわけではない。

「ですが、女中たるもの、ときにはきつい仕事もこなさねばなりません。精液を吸い出した後、さらに湯で洗い流し、膣内に精子を殺すお薬を塗り込みます。できるだけ妊娠する確率を減らすよう最善を尽くさねばなりませんから」
「や、やらない。約束する」

 ウィルは思わずそう請け負った。
 トリスはただこくりと頷いて、少し目を瞑ってやや首を振った。
 そのぐさから、トリスなら本当にフローラのあそこに口をつけるのだろうなと思う。

「何よりも肝心なのはここからにございます。フローラが目を覚ました後は、ご主人さまが我慢できずに行為に及んだということを説明しなければなりません。なぜならフローラは敬虔な家庭に生まれたので、結婚するときに処女でなければ特に問題となります。フローラ自身も処女を失ったら家族にたいめんが保てないでしょう。真面目な子ですから、仕事が手につかなくなったら困ります」

 ウィルはあっと口を開いた。そこまで考慮していなかったのだ。
 避妊はもちろん大切だが、一人一人個々の女の事情を把握しないといけない。そういう観点では、女中を手篭めにするのと、人間が人間を一対一で口説くのとそう大きな違いはないのかもしれない。

「ですから、フローラが引き続きこの屋敷で働くよう、全力でなだめすかさねばなりません。そうなるとフローラに借りができますから、どうしても多少、ご主人さまの屋敷内での威厳が弱くなります」

 そう言って、トリスは真新しい布でフローラの陰部を覆い包むと、フローラの下着を履かせた。そして、すっかりスカートの位置を元通りに直してしまった。
 それを寂しいなと思いつつも、

「なら、結婚を前提にしないことには、フローラとは関係を持てないということだよね?」

 ウィルはもっともな疑問を口にした。
 敬虔な信徒であるフローラの意思を尊重するなら、納得ずくで手籠めにするのは到底できそうにない気がする。

「いいえ――世の中は綺麗ごとだけではありません。多少費用がかかりますが、教会の司祭を抱き込んで、処女であることを証明させればよいのです」

 虚をつかれた。
 マルク領にはそれなりに大きな教会が一つあり、その教会には毎年多額の献金を行なっている。
 そこにはいまにも倒れそうな爺さんが勤めていた。
 あんなよぼよぼの爺さんの老眼で処女膜の有無なんて確認できるはずがない。
 もしフローラを抱こうとするならば、それが最善の手であろう。

「ようやく、トリスの言っていることが分かったかもしれない。今後はしっかりと段取りを踏めと」
「そのとおりです。ご主人さま。女とは深く入り組んだ何重もの堀をもつ城です。征服するには、女の外堀も内堀も全て埋めてしまえばよろしい。ご主人様が多くの城の完全な支配者となられますように」

 トリスは満面の笑みで微笑んでみせた。

「では、フローラが起き出したら、さきほどのように唇を吸ってあげてください」
「え、ええ!?」
「まさかフローラの初接吻をそのまま無かったことにされるおつもりですか?」

 痛いところを突かれた。
 自分の女にした後も、トリスが厳しいのには変わりがなかった。
 フローラの乳房はトリスに誘導されて触ったが、フローラの唇を奪ったのはウィル自身の意思によるものだ。

「べつに無理矢理でも良いのです。そういう女です。唇をささげたあとは、もうフローラは胸を触ろうが尻を触ろうが、スキンシップの延長にしか感じないでしょう」

 トリスはそう請け負った。

「その後は、最後の一線を超える合意を取りつけるだけです。汽車の切符を買うようなものです。レールさえきちんと敷かれてあれば、いかように扱っても問題ありません。ご主人様のお望みのままに」

 さらに、トリスは赤い唇をえつで歪め、ウィルを唆すのであった。

「なんなら、どのようにフローラの唇を蕩かすか、いまここで練習されてもよろしいかと思います。これからご主人さまが屋敷の女たちを掌握していく大事な訓練ですから、女中長として何のぞんもないです」

 少年は、この部屋でしばしの時を費やしたのであった。


◇ 屋敷の女性一覧 ◇
女中長   1人 (トリス◎)
蒸留室女中 2人
洗濯女中  6人
料理人   1人 (リッタ)
調理女中  4人 (マイヤ)
皿洗い女中 2人
酪農女中  3人
客間女中  1人 (フローラ△)
家政女中 12人
雑役女中  8人
側付き女中 1人 (ソフィア△)
    計41人
お手つき  1人 (済み◎、途中△)




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書いている著者自身がWeb版/同人Kindle版/商業版の各バージョンの違いで混乱しているものでして、もし読んで気になる点や誤字脱字などございましたらご指摘願います。
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